立憲民主党の野田佳彦代表は12日の記者会見で、今国会で高市早苗内閣に対する不信任決議案を提出しないと表明した。年明けの通常国会での本格的な論戦を見据え、「功罪を評価する段階ではまだない。評価を定めるのは時期尚早だ」と述べた。
もっともらしい説明だが、野党をまとめる力を欠いているのが実情だ。
■単独行動に出れば「総スカン」
野田氏は同日の記者会見で、首相の政権運営について「失点ではないかと思うこともあるが、逆に頑張っている部分もある」とも語った。執行部が政権との対決姿勢に及び腰な理由について、立民中堅は「筋論では不信任案を提出すべきだが、ここで単独行動に出れば他の野党から総スカンを食らう」と解説する。
臨時国会は自民党と日本維新の会が連立を組む少数与党でスタートした。だが、衆院では無所属の3人が自民会派に加わったことで、与党は辛うじて衆院過半数(233、定数465)を回復した。
与党にとって薄氷を踏むような国会運営は続くが、昨年10月の衆院選以降、野党が過半数を握っていた衆院勢力が逆転してしまった。野党が結束して不信任決議案を出しても可決は難しい。立民ベテランは「ポーズのためだけに出す必要はない」と語り、野田氏の判断を尊重する。
そもそも、立民は国民民主党や公明党、共産党などを糾合できておらず、「野党の結束」という前提も欠いている。
■党勢低迷で解散誘発に警戒感
令和7年度補正予算案への賛否を巡っては、立民と公明は共同で組み替え動議を提出したが、否決されると、公明は補正予算案に賛成した。終始反対を貫いた立民との温度差が目立った。政府関係者は「公明は与党に戻る道を残している」と話す。国民民主は政府が経済対策にガソリン税の暫定税率廃止を盛り込んだことなどを評価し、賛成に回った。
そんな公明や国民民主と路線をあわせるため、立民は安全保障関連法について従来の「違憲部分があれば廃止する」との立場を修正する党内議論を始めた。しかし、過去に合流協議も含めて立民と交渉してきた国民民主幹部は「できっこないことばかり言って批判するだけ。もう立民とはない」と突き放す。
不信任案の提出が衆院解散・総選挙の引き金になりかねず、党勢が低迷する中で踏み切れない内部事情もある。立民中堅は「今のような立ち位置では格好がつかない」と嘆き、別のベテランは「政権と大げんかすべきだ」と執行部の弱腰を叱る。しかし幹部は「執行部内で不信任案提出なんて誰も議論していない」と頰かぶりする。
(末崎慎太郎)
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