家中どこでも快適、という魔法の言葉
「廊下もトイレも冬暖かく、夏涼しい」「エアコン一台で家中をカバー」。 そんな魔法のようなキャッチコピーで、大手ハウスメーカーを中心に一時期爆発的なブームとなったのが“全館空調”です。ホテルのような快適な暮らしを夢見て採用した家庭も多いはず。
しかし、メンテナンスの現場で大工さんが目にするのは、10年、15年と経った後に「全館空調を動かすのをやめ、各部屋に普通のエアコンを付け直している」という、驚きの光景でした。
憧れの設備だったのに、なぜ数年で状況が変わってしまうのでしょうか。
1. 修理費が「車一台分」かかるという現実
大工さんが指摘する最初の壁は、その圧倒的な「維持コスト」です。
「普通の壁掛けエアコンなら、壊れても10万円前後で買い替えられる。でも全館空調はシステム全体が巨大な精密機械なんだ。10年経って心臓部が故障した時、修理や交換の見積もりが『100万円単位』で来ることも珍しくない」
この「予期せぬ巨大な出費」に耐えられず、結局システムを放置して、数万円で済む普通のエアコンに乗り換える家が後を絶たないのです。
2. 電気代高騰が「憧れ」をトドメ刺した
さらに追い打ちをかけているのが、近年の深刻な電気代の上昇です。
「全館空調は、家族がいない部屋や廊下まで常に冷暖房し続ける仕組み。昔の電気代なら許容できたかもしれないけど、今の単価では家計を圧迫するどころの話じゃない。『家中快適』という言葉が、今や『家中の電気代が怖い』というストレスに変わってしまっているんだ」
大工さんによれば、あまりの高さにシステムを切ってしまい、結果として家全体の換気バランスまで崩れてカビが発生するという本末転倒なケースもあると言います。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a231f75761bf211c776c746be3af1db16e1f45df
