先日、中国の金融機関に勤める中国人の知人と話す機会があった。現在の中国経済を、現地に身を置く彼はどう見ているのか。知人との対話の内容を、ここに再現して紹介する(安全上の配慮から、個人の特定につながる情報は抽象化・改変しているのでご了承いただきたい)。<中略>
──中国の景気は簡単には回復しない。そう考えてよいのでしょうか。
「そう思います。私にも先が見えない。しかし、金融業界にいる人間として、不動産バブル崩壊以上に懸念していることがあるんです」
──それはいったい何ですか?
「AIです。私は今の中国のAIに絶望しています」
──しかし、中国にはディープシーク(DeepSeek)のような高性能なAIがあると聞いていますし、政府も重点産業として育成しているのでは?
「確かに、中国のAI開発能力は米国に引けを取らない。優秀な人材がそろい莫大な投資があるのは事実です。しかし、私たち金融機関の人間には、ほとんど役に立たないのです」
「金融の要諦は、不良債権の額や資金流出の動向、そして未来の景気予測といった『情報の解析』にあります。しかしディープシークに聞いても、返ってくるのは当局の意向を反映した紋切り型の答えだけ。世界の金融関係者はAIを駆使して情報を深掘りしているのに、中国の金融機関だけがAIから『当たり障りのない回答』しか得られない。これでは世界から大きく後れをとることになります」
──VPNを使えば、グーグルのGeminiなどにもアクセスできるのでは?
「VPNは原則禁止です。建前上は都市部を中心に数千万人が使っているとされていますが、ある人はこれを『スピード違反』と呼んだ。皆やっているが、捕まるのは一部だ、と」
──ならば、それを使えばいいのでは?
「かつてはそうでした。しかし今は違います。国家安全維持法、スパイ防止法、愛国法などが次々に整備され、監視の目はかつてないほど厳しくなっています。VPN利用で拘束された事例も大きく報じられるようになりました。
当局は、誰がVPNを使い、何を検索しているのかを検知できるといわれています。地方政府の不良債権問題を調べれば、それだけで『スパイ』と見なされるリスクがあるのです」
矛盾していることを平気で行う中国政府
──香港なら状況は違うのではありませんか?
「かつて当局は香港を大目に見ていましたが、今は締め付けが激化しています。香港であってもVPNで中国経済の核心に触れることは極めて危険です。どこからが『スパイ』の線引きになるのか、明確な基準がない。中国は法治国家ではなく人治国家です。法律があるようでいて、昨日まで許されていたことが急にダメになる。
当局は経済運営に自信を失い、資金の国外流出を極端に恐れています。そんな中で世界の金融事情を探るのは、あまりにリスクが高い」
──非常に息苦しいですね。
「そうです。皆、萎縮しています。中国の金融機関は、市場ではなく当局の命令で動かされるようになった。当局の意向に逆らえば即逮捕という緊張感の中で働いています。
我々は公務員と並び、大手金融機関という『安泰』な場所にいますが、かつてのような自由なビジネスはできない。今の若者が国有銀行を目指すのは、自由を求めてではなく、経済が停滞する中で『生き残る場所』として選んでいるに過ぎないのです。ボーナスが減ったので爆買いはできませんが、デフレのおかげで生活自体は維持できています(笑)。
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