香港政府はこのほど、2024年の年間観光統計(速報値)を発表した。それによると、香港住民の出境数(アウトバウンド)は過去最高の1億人超に達し、2019年比で10.6%増となった。一方で、訪港旅客数(インバウンド)は4450万人にとどまり、コロナ禍前の8割程度に留まっている。また、訪港客の1人当たり消費額も2019年比で約5.6%減となっており、依然として完全な回復には至っていない。アウトバウンド・インバウンドの回復の濃淡が浮き彫りとなる結果となった。<中略>
アジア開発銀行やAMRO(シンガポールにある国際機関「ASEAN+3マクロ経済調査事務局」)などの分析によれば、2024年の香港のインバウンド市場は回復基調にあるものの、回復スピードはシンガポールやバンコクなど、他のアジア主要都市に比べて緩やかであるとの見方が示されている。
この背景には、香港のインバウンド市場構造が中国本土への依存度が極めて高い点がある。2019年時点で訪港者全体の約78%を中国本土からの旅行者が占めており、コロナ後の本土側の出境制限・段階的再開の影響が香港に大きく波及したとみられている。
また、シンガポールやタイが早期に「国際線直行便の増強」「入国手続きの簡素化」「長距離市場への多様なプロモーション」を行ったのに対し、香港ではその動きがやや限定的だったという分析もある。
回復が早い東南アジア市場
ただ、香港インバウンドの客数ベースで2019年を既に上回っている国・地域も複数存在する。フィリピン(2019年比32.0%増)、シンガポール(同19.1%増)、タイ(同13.3%増)などが顕著であり、東南アジア市場が客数回復のけん引役となっているのがわかる。
一方、日本から香港への渡航者数は56万169人を記録し、国際市場の中でも上位を維持しているが、回復率は2019年比で約50%に留まっており、回復の余地が非常に大きい。
そのほか、欧米豪市場とも、2019年比では大きな回復の余地を残しており、今後の更なる誘致策が期待される。
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