イオン傘下のダイエーは無人店に参入する。今夏、東京都内に1号店を出す。米半導体大手のインテルなどが出資する中国の新興企業の技術を使い、出店費用を従来の無人店の2分の1以下に抑える。低コスト技術の上陸で、国内での無人店舗の普及に弾みがつく。
中国のスタートアップ「雲拿科技(クラウドピック)」と組む。同社は2017年の創業で、これまでに世界11カ国の約130の無人店に技術を提供した実績がある。
ダイエーは1号店となる小型店を江東区に開く。独自の店舗ブランドを付け、既存のスーパーと区別する方針。レジをなくし原則、無人で運用する。効果を検証したうえで多店舗展開を検討する。
クラウドピックの技術は広さ1000平方メートル規模のスーパーまで適用できるという。店で集めるカメラの画像や販売データの保管や分析は国内で行う。
出店費用は100平方メートルあたり3000万円前後を想定。一般的なコンビニの広さ(200平方メートル)の場合、既存の有人店舗並みですむ。従来、米アマゾン・ドット・コムの「アマゾン・ゴー」に代表される一般的な無人店の出店費用は1億5000万~2億円とされ、初期投資がかさむのが課題だった。
無人店は店内に備えた無数のカメラや商品棚に付けた重量センサーで誰が何を手に取ったかを認識し、自動課金する。レジ決済をなくして無人化を実現している。
ダイエーの新店舗ではカメラやセンサーの数を減らすことで初期費用を抑えつつ、人工知能(AI)によるデータ分析で精度を補う。
日本の小売業は労働集約型で生産性が低い。経済産業省の調査によれば18年度の小売業の労働生産性は498万円と製造業の半分以下だ。かねて課題になっていても抜本的なデジタル対応は遅れていた。
無人店は18年開業のアマゾン・ゴーを皮切りに米中が先行した。だが新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、非対面・非接触のニーズから国内でも開業が相次ぐ。
イオン傘下のカスミ(茨城県つくば市)は富士通と、高級スーパーの紀ノ国屋とファミリーマートはJR東日本の関連会社、TOUCH TO GO(東京・港)とそれぞれ組んで無人店を開いた。
就労人口の減少などを背景に小売業界も人手不足への対応を迫られる。AIなどの力を借りた無人化は、店舗運営を効率化するための有力な選択肢となる。
日本経済新聞 4月6日18:00
https://r.nikkei.com/article/DGXZQOUC01EKI0R00C21A4000000