北朝鮮で金正恩総書記が進めた穀物生産構造の転換政策に対し、「食糧難の解決どころか、かえって悪化させた」との不満が住民の間で強まっている。
生産を拡大した大麦の多くが住民向け食糧ではなくビール製造に回されているためで、米政府系放送のラジオ・フリー・アジア(RFA)が17日、北朝鮮内部の証言として伝えた。
金総書記は2021年9月の最高人民会議施政演説で、食糧増産策としてトウモロコシに代えて小麦や大麦の栽培を拡大するよう指示。
同年末の朝鮮労働党中央委員会総会では「新時代農村革命綱領」を打ち出し、トウモロコシやジャガイモ中心だった穀物生産を、コメ、小麦、大麦中心へ転換する方針を本格化させた。
しかし、平安北道の住民はRFAに対し、「最近はほとんどの住民が、穀物生産構造の変更で食糧事情がさらに悪化したと話している」と証言。
その理由として、「収穫された大麦が住民の食糧として配給されず、別の用途に回されている」と語った。
同住民は、北朝鮮の農業は自然災害の影響を大きく受ける一方、灌漑施設などの基盤整備は依然として不十分だと指摘。
その上で、「1ヘクタール当たり約6トン収穫できるトウモロコシを、約2トンしか収穫できない大麦に切り替えるのは合理的ではない」と政策を批判した。
さらに現在は、地方工業振興政策の一環として各地でビール増産競争が進められているという。
特産品となる原料に乏しい地方では、大麦を使ったビールが地域ブランド商品に指定され、各工場が競って生産を拡大しているとされる。
住民は、「こうして造られたビールは住民の食糧不足解消には役立たない」と指摘。
ビールは国家貿易会社を通じた外貨獲得用の輸出品となるほか、一部は国内の富裕層向けに販売されるが、「食糧として国民に還元されるわけではない」と不満を漏らした。
平安南道の住民もRFAに対し、「各地でビール生産競争が激しくなっている。トウモロコシ畑を耕し返して植えた大麦が、その主原料になっている」と証言。
「穀物生産構造の変更が食糧難の解決につながらないことが明らかになったにもかかわらず、地方工場にはビール生産ノルマが課され、利益を党に上納する仕組みになっている。政策の本来の目的そのものが疑わしい」と語った。
また、「比較的気候変動に強く、収量も多いトウモロコシは『畑作物の王様』と呼ばれてきた。それを大麦に切り替え、ビールで利益を得ようとする当局の姿勢は、最初から住民の食糧問題に関心がなかったことを示している」と批判した。
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