景気低迷、中国で紹興酒の消費が激減 ワインや蒸留酒に押され、日本市場に熱視線
寒い季節は中華料理に温かい紹興酒―。日本でもなじみ深い紹興酒が本場の中国で消費が激減している。ワインブームや高級化した蒸留酒の白酒に押され、近年の景気低迷による宴会減少が追い打ちをかけた。苦境のメーカーが熱視線を向けるのは海外輸出先トップの日本市場。カクテルなど新たな楽しみ方を紹介して販売拡大を図っている。(共同通信上海支局=柴田智也)
紹興酒はもち米と麦こうじが原料の醸造酒。色合いから「黄酒」と呼ばれる。製法や原材料に条件があり、本来は浙江省紹興市で造られたものだけが紹興酒と認定される。生産地、消費地とも同省や隣接する上海市に集中している。
上海市で日本人駐在員にも人気の紹興料理店「孔乙己酒家」を経営する楊金宝さんは「店での紹興酒の販売量はピークの2008年と比べ6分の1に激減した」と嘆く。「愛好者の大半が高齢者で年々減る一方だ。そして若者はほとんど飲まない」と解説。接待の場では高級な白酒が重宝されるため、販売は「上海市の減り幅が特に大きい」と肩を落とす。
業界団体などによると、メーカーの総売り上げは2017年の195億元(約4千億円)から2023年の85億元まで縮小。メーカーの数も3分の2に減った。同じ時期、白酒の市場規模は拡大した。
国内市場の低迷を受け、各社は知名度が元々あった日本への輸出拡大に乗り出した。中国メディアによると、2023年1~10月の輸出割合は日本が35%でトップ。2025年7月、東京都内で開かれた飲料展には、紹興市の複数社の10ブランド以上が出展し、試飲や製造方法の紹介でアピールした。
大手の「会稽山」は1990年代から日本に輸出してきたものの、中華料理店への販売が中心で、売り上げは頭打ちだったという。昨年は新たな需要を掘り起こそうとまだ珍しい高価格帯の紹興酒を投入。今年は大阪府と沖縄県で、若者が手に取りやすいスパークリングの販売を始める。試行錯誤が続くが、傅祖康・副董事長(副会長)は「5年後の売り上げ倍増を目指す」と言い切る。
中国最大手「古越龍山」の関係者は2025年5月、紹興酒入りのカクテルやコーヒーを楽しめるバーを横浜中華街にオープンした。紅茶とジンジャーエールが入った「紹興酒アイスティー」など飲みやすいメニューを考案。これまで縁がなかった層への普及を狙っている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6f8cc750b92a6db3fe629f9e6fd7db19b5bb169e
