1:名無しさん




宮崎 『火垂るの墓』 にたいしては強烈な批判があります。 あれはウソだと思います。まず、幽霊は死んだ時の姿で出てくると思いますから、ガリガリに痩せておなかが減った状態で出てくる。それから、巡洋艦の艦長の息子は絶対に飢え死にしない。それは戦争の本質をごまかしている。それは野坂昭如が飢え死にしなかったように、絶対飢え死にしない。海軍の士官というのは、確実に救済し合います、 仲間同士だけで。しかも巡洋艦の艦長になるというのは、日本の海軍士官のなかでもトップクラスのエリートですから、その村社会の団結の強さは強烈なものです。神戸が空襲を受けたというだけで、そばの軍管区にいる士官たちが必ず、自分じゃなかったら部下を遣わしてでも、そのこどもを探したはずです。……それは高畑勲がわかっていても、野坂昭如がウソをついているからしょうがないけれども。戦争というのは、そういうかたちで出てくるものだと僕は思いますけどね。だから、弾が当たって死ぬのもいるけれど、結局死ぬのは貧乏人が死ぬんですよ。

稲葉振一郎「ナウシカ解読」 インタビュー