「徒歩圏内の店舗が閉店する。もう終わりだ」「またひとつ思い出の地が消えていく」「帰り道の癒やしスポットが……」――こんな悲痛な声がネット上であふれている。
「ブックオフなのに本ねぇじゃん!」と俳優・寺田心が咆哮するCMでもおなじみ、本などの中古品販売・買取大手、ブックオフがここへきて続々と閉店を発表。しかも、そのどれもが都心部に集中していることで、ファンに衝撃を与えているという。
東京では、10月13日閉店の「阿佐ヶ谷南店」にはじまり、10月20日には「新高円寺駅店」と「学芸大学駅前店」が同時に閉店することが決まっている。また千葉でも、やはり10月20日に「行徳駅前店」の閉店が告知された。
とりわけショックを受けたのは杉並区民だろう。高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪といったサブ色の強い町を擁するだけに、古書やレコードを探し求めてブックオフに通うという地元民も少なくない。しかし、今回の閉店ラッシュを受けて、同区にあるブックオフはわずか3店舗のみとなる。
今年に入って閉店となったブックオフ店舗には、大阪の「喜連瓜破(きれうりわり)駅前店」(6月17日)や愛知の「名古屋大曽根店」(4月30日)などがあるが、ここまで複数店舗の同時閉店は一度もなかった。
となれば、今回の一連の閉店は、ブックオフの《異常事態》なのだろうか。
大規模チェーン店の「閉店ラッシュ」といえば、記憶に新しいのが今年8月に話題となった、デリバリーピザチェーン大手「ドミノ・ピザ」の大量閉店だ。営業不振に伴い最大80店舗の閉店を発表、青森県や山形県では、ドミノ・ピザが1店舗もない空白地帯となったことも耳目を集めた。
このドミノ・ピザの閉店ラッシュには明確な理由があった。コロナ禍によるデリバリー需要の増加を受け、積極的な出店攻勢に出たことだ。結果、2023年には国内1000店舗を突破したが、需要が落ち着いたことで風向きは一変。不採算店舗が続出し、あえなく大量閉店を余儀なくされたというわけだ。
では、ブックオフも同様に「業績が悪いから店舗の閉鎖を進めている」のかと言えば、そうではない。むしろ、ブックオフの業績は絶好調だ。
ブックオフを運営するブックオフホールディングス株式会社の2024年5月期第3四半期決算によれば、売上高は前年同期比9.3%増の823億円。国内ブックオフ事業を中心にすべての事業で増収を達成し、経常利益も同12.5%増の30億円となっている。
前年同期比、前四半期比とも増収増益で、売上高、経常利益ともに、四半期ベースでは過去最高を更新した形だ。
国内ブックオフ事業だけに絞っても、その勢いは変わらない。今年9月4日に公開された8月の既存店売上高は前年比で107.2%を示している。トレーディングカード・ホビー、ゲームなどのソフトメディア、書籍、アパレル、そのいずれもが前年を上回る売上高になっているという。
一連の閉店の原因が、業績不振でないことは確かだ。では、考えうる理由は何か。古書・中古ソフト販売市場に詳しい業界アナリストはこう分析する。
「ブックオフはかつて『閉店ラッシュ』に追い込まれた経験があります。それは最終赤字を計上した2016~2018年の時。ちょうどECやCtoCが拡大し、競争が激化する中で、同社は具体的な対抗策がとれず、収益が低迷してしまった。
しかし、その反省もあり、自社ECサイトと店舗との連携強化や、高額商品を取り扱うプレミアムサービス事業や買取特化型店舗を立ち上げるなどし、今では経常利益30億円を創出できるほどの盤石な事業体制を構築しています。
しいて懸念点を挙げるとすれば、中核商材に位置付けている書籍が減収傾向にあるということ。紙ベースの新刊書籍販売部数が減少傾向にある以上、今後もダウントレンドは避けられない。
となれば、長年にわたり営業している店舗にありがちですが、書籍買取・販売に依存している従来型の店舗は、整理の対象になりやすいはず。閉店が決まった店舗はそれに当てはまるのではないでしょうか」
確かに、ここ最近のブックオフの新店やリニューアル店を見てみると、カードの対戦スペースやプラモデルディスプレイを設けた店舗など、単なる書籍の売り買いだけにとどまらない、体験価値を重視した店が増えている。そのスペースを創出できない、昔ながらの店舗は“時代遅れ”として整理されている可能性もある。一方、ブックオフの関係者からはこんな指摘もある。
「今年6月に発覚した、従業員による架空買い取り事件は、本社としてもまさに寝耳に水のことだったようです。なんたってこれまで行われてきた棚卸では、不適切な在庫計上は一切見抜けなかったわけですから。
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https://gendai.media/articles/-/138172
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