[値段の真相 低価格は今]<1>
「1皿100円」をキャッチフレーズにしてきた回転ずし業界で、価格戦略の違いが鮮明になっている。
スシロー
1984年の創業以来、最も安い皿で税抜き100円を維持してきた最大手のスシローは、10月に大部分の店舗で価格を10円引き上げ税込み120円とした。
コロナ禍で外食産業全体が落ち込むなか、持ち帰りニーズなどに対応した回転ずしの市場は拡大を続け、業界は「勝ち組」とされる。だが、人気ネタのマグロやサーモンなどは各社ともほとんどが輸入で、物流費の上昇や円安によって仕入れ値が高騰している。
外食業界は一般に、メニューに対する食材価格の割合が3割程度だが、回転ずしは5割程度。コスト増の打撃を受けやすい。
スシローを展開するフード&ライフカンパニーズの水留浩一社長は、値上げについて「生活者に負担を強いることは心苦しいが、すしのうまさを守っていく必要がある」と理解を求めた。
結果はどうか。10、11月の売り上げは前年同月比で客単価が2%上がったものの、既存店売上高は18~25%、客数も20~27%減った。来店客から「お得感が薄れてきている」との声が寄せられるといい、キャンペーンなどで巻き返しを図る。
くら寿司
業界2位のくら寿司もまた、10月に「100円皿」の値上げに踏み切った。
社内では、魚介類の価格上昇が目立ち始めた10年ほど前から何度も値上げを検討しながら、38年前に回転ずし業界に参入して以来の価格にこだわり、我慢を続けてきた。だが、「魚介類は(値上がりに)拍車がかかる」(田中邦彦社長)と予想される状況に、大半の店舗で税込み価格を5円引き上げ115円とした。
他方で、「値上げによる負担感を少しでも和らげたい」と、220円皿は165円に値下げした。メニュー構成は、115円皿が5割、165円皿が2割、キャンペーンなどの特別価格が3割を占める。値上げ・値下げの組み合わせなどにより、既存店ベースの客単価は5%程度上がり、客数の減少は10%未満に踏みとどまっている。
業界関係者からは早くも、「スシローは次の手を打たないと、くら寿司が首位に立つ日も現実味が出てくる」との声があがる。
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はま寿司
上位2社の背中を追う3位のはま寿司は、マグロやサーモンなど主力商品で税抜き100円を維持している。親会社は、牛丼チェーンのすき家などを運営する外食大手のゼンショーホールディングスで、「体力」を武器に挑む構えだ。「10月以降、近隣に競合他社がある店で特にお客さんの入りが良い」(ゼンショーの丹羽清彦執行役員)という。
2010年まで業界トップながら、翌年にスシローにその座を奪われ、現在は4位に沈むかっぱ寿司もまた、9月に主力の100円皿を1・5倍の約80種類に増やすなど、低価格にこだわる。
回転ずし評論家の米川伸生氏は「上位との差別化で価格に頼るしかないのが実情。ただ、コスト上昇は確実に響いているので、品質を落とさない限り、100円ずしはいずれ姿を消すだろう」と話す。
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https://www.yomiuri.co.jp/economy/20221218-OYT1T50230/
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