宮城県気仙沼市の遠洋マグロ漁船員を志す大卒者が増えている。若い世代でマグロ漁船に対するかつてのきつい、汚い、危険の「3K」イメージが薄まりつつあることに加え、新型コロナウイルス下での価値観の変容や経済停滞が背景にありそうだ。
「好きなことに挑戦」
気仙沼港を基地とする遠洋・近海漁船の乗組員採用を担う宮城県北部船主協会(気仙沼市)によると、東日本大震災後に仲介した漁船員161人中、大卒者は12人。このうち昨年度だけで遠洋船乗組員に仲介した大卒者は5人いる。問い合わせ全体に占める大卒者の割合も増加傾向という。
大東文化大を卒業し、船主協会での研修を終えて22日に出港する男性(22)=米沢市=は「好きなことに挑戦し、世界を広げたかった」と話す。
今春、早大を出て30日に出港する男性(23)=横浜市=は「就職活動ではやりたい仕事がなかった。世界を巡り大きなマグロを取る漁師に憧れた」と目を輝かせる。
これまで他にも防衛大、筑波大、東北大などの卒業生や大学院出身者から志願があった。大卒者はこれまで希少だったが、受け入れた船頭からは「仕事の覚えがいい」と好評という。
職場環境を発信
担い手確保に向け、船主協会がブログや動画で仕事のやりがいや労働環境の改善状況を発信してきたことが3Kイメージの変化に貢献しているようだ。事務局長の吉田鶴男(たづお)さん(51)は「みんな明るく前向き。誇れる職業の一つと捉えられている」と手応えを語る。
新型コロナの影響も見え隠れする。ある大手ゲームメーカー勤務の20代男性からは「生きている実感が欲しい」と就労相談があった。乗船には至らなかったが、リモートワーク続きでゲーム制作の気力を失ったと吐露していたという。
コロナで経済が打撃を受ける中、「奨学金の返済に充てたい」と高い収入に魅力を感じる大卒者も少なくない。コロナ流行後、船主協会への問い合わせは月に10件以上と高水準が続く。
一般社団法人全国漁業就業者確保育成センター(東京)によると、1年ほど前から全国的に大卒者の遠洋マグロ漁船への関心が高い傾向が見られる。担当者は「大きな夢を抱いて船に乗る若者を定着させるのが課題。受け入れ態勢をより充実させたい」と話す。
河北新報 2022年5月21日 6:00
https://kahoku.news/articles/20220520khn000043.html
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