検問所の兵士「女は行け、男は残れ」避難民が殺到…殺気立つポーランド国境
【メディカ(ポーランド東部)=笹子美奈子】ウクライナからポーランドへと抜ける幹線道路M11号線の先に、ようやく国境の検問所が見えた。戦火を逃れたウクライナの避難民ら数百人が集まっている。そこは 混沌こんとん の渦だった。
ウクライナ西部リビウの街を出発してから20時間あまり。2月28日早朝にウクライナ側国境にたどり着いた。渋滞にからむ規制で、車での移動を途中で諦め、避難民に交じって26キロ・メートルを歩いた。
検問所の前は、群衆で身動きが取れない状態だった。3時間並んでも、行列はほとんど進まない。やがて、ウクライナ軍の警備兵が近づいてきて、通用門に移動するよう指示された。同僚の男性カメラマンと一緒に向かおうとすると、「女は行け。男は残れ」とカメラマンだけが止められそうになった。
ウクライナではロシア軍の全面侵攻が始まった2月24日に総動員令が発出された。ウクライナ国籍の18~60歳の男性は出国できない。外国人を装って国外に逃げる者が出ないよう、男性は一人一人が厳重な審査を受ける。ウクライナ政府の取材許可証を提示し、2人とも報道目的で滞在していたことを説明して、どうにか検問所を突破した。
ウクライナ側の出国ゲートを抜けると、今度はポーランド側の入国審査を待つ行列ができていた。審査場へと続く通路は避難民で埋まり、皆が殺気立っていた。通路の先にある高さ約2メートルの鉄柵越しに、避難民がポーランド軍の警備兵に向かって叫び声を上げている。
警備兵に殴られたのか、1人は顔にあざができていた。それでも抵抗を続ける人、少しでも先に進もうと前の人に体当たりする人、気力を失ってしゃがみ込む人。この国境を越えなければもう後はない。必死の形相が目に焼き付いた。
子供を抱えた女性が、避難民の間を通してもらい、ようやくポーランド側にたどり着いた。子供はこれまでの苦しい道のりを思い出したのか、激しく泣き出した。母親は放心した表情で、ただ子供を抱きかかえていた。
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国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ウクライナから国外に逃れた避難民は侵攻5日目で50万人を超え、うち28万人がポーランドに渡った。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20220302-OYT1T50042
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