4月に向けて引っ越しが多くなるこの時期。新居での生活に胸躍らせる一方で、退去時にどれくらい修繕金を請求されるのか、不安に感じている人もいるかもしれない。敷金として入居時に支払い済みのお金が戻ってくるのか、あるいはそれを超えた金額を請求されてしまうのか……。気になる「敷金返還トラブル」に見舞われた人たちの実体験を、いくつか紹介しよう。
入居時からあった傷なのに…
「本当なら敷金は全額返ってきたかもしれませんが、入居時に準備を怠ったことが不幸の始まりでした。良い勉強代になりました」
そう嘆くのはIT企業に勤務する30代男性・Aさんだ。賃貸マンションに住んでいたが、もう少し設備が良い物件に住みたくなったため、契約を更新することなく引っ越しすることにした。
「会社の近くではあったのですが、築30年以上の物件なので、設備面がもともと貧弱。風呂とトイレが一緒だし、キッチンも狭く、水漏れもあったので、引っ越したいと思いました。基本的に在宅勤務になったので、会社から多少遠くてもいいので、広くて機能が充実しているところがいいなと」(Aさん)
そうした理由から引っ越し先を決めたAさん。だが、いざ引っ越しとなり、気になりだしたのは退去費用だった。実は入居時から、物件には様々な問題点があったのだという。
「入居時から、水漏れをはじめ、キッチン周りに落ちない油汚れ、トイレの扉の立て付けが悪く、また天井のクロスが少し剥げていたんです。さらにマンションの構造上、玄関のドアに雨が吹き付いてしまうので、ドアクローザーとひんじに錆がありました。部屋の壁にも無数の画びょうの穴が……。
ただ古い物件だからそんなものかと思って、管理会社に申告もしなかったし、写真も撮っていませんでした。すると退去時に『原状回復費用』として、これらの傷や汚れの修繕金がかかると言われ、敷金8万円が戻ってきませんでした。もし、写真を撮っていれば、私のせいではないと主張できたのに……。でも、敷金を超える額を請求されるケースもあるようなので、この程度で収まって良かったと思うことにしています」(Aさん)
もちろん、Aさんが入居時に写真を撮っていれば、こうしたトラブルは避けられたかもしれないが、本来、貸主が入居者に対して原状回復費用を請求する場合、貸主側が証拠を提示しなくてはならない。つまり、元々Aさんが写真を撮っておく必要などなく、貸主側に立証責任があるのだが、Aさんはそんなことはつゆ知らず、管理会社の言いなりになってしまった。
「最悪、弁護士を立てる」と脅かされたが…
敷金なしの物件で退去時に思わぬ請求をされて驚いた人もいる。メーカーに勤める20代女性・Bさんは、1年未満の入居にかかわらず、身に覚えのない修繕費用を請求された。
「8か月くらいしか住んでないのに、壁紙の張り替え、入居前からあった傷の修復、鍵交換などを理由に、20万円近く請求されました。規約には1年未満の退去でも違約金はなかったし、そもそもきれいに使っていたので私には過失はないはず。それなのに、納得いきませんよね」(Bさん)
管理会社に電話で問い合わせたBさんだったが、「最悪、弁護士を立てる可能性もある」ことをほのめかされ、たじろいでしまったという。だが、Bさんの兄が電話に代わったことで形勢が逆転し、相手側の態度が変わった。
「兄は先方により詳細な請求書を作成してほしいと提案。国民生活センターに問い合わせ、適正価格なのか精査してもらうと伝えました。それでも裁判を起こすというのなら、こちらも弁護士を立て、訴訟を辞さないと堂々と反論してくれました。結果、なぜか部屋のクリーニング代だけで済みました。もしかしたら女性だからと、なめられていたのかもしれません」(Bさん)
国土交通省が発表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」とされている。つまり、「通常の使用」の範囲内で生じた傷や劣化については、基本的に入居者が修繕費用を負担する必要はない(ただし、鍵交換費用については「賃貸人が負担することが妥当」とされている)。もちろん貸主側はそれを知っているのだろうが、“慣例”として敷金を没収しようとする例は少なくないようだ。
※続きはリンク先で
https://news.yahoo.co.jp/articles/dbc2db867da41349352b8845c139670627a9a0e5
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