北海道小樽市の水道は炭酸水!? そんな「都市伝説」がまことしやかに流布している。X(旧ツイッター)をのぞくと、「そのまま飲むとシュワっとするらしい」「ほんのり炭酸ってマジ?」といったうわさが飛び交う。全くの誤解なのだが、なぜこんなことになってしまったのか――。(片岡正人)
近年下火になっていたうわさに再び火をつけたのは、ある民放の情報番組。パナソニックが今年2月に発表した「おいしい水道水の都道府県ランキング」を取り上げ、「小樽市はちょっと変わっていて、炭酸ガスが程よく溶け込んでいるので清涼感が楽しめるそうです」とコメントしたのである。
あわてた小樽市は「微量の炭酸が水道に溶け込んでいるのは小樽に限ったことではない」とテレビ局に連絡。番組のホームページ(HP)に残っているコメントの文言を「小樽市などは」に修正してもらった。だが、そもそも原因は小樽市の側にあった。
遡ること20年前。市は水道創設90周年を記念し、おいしいと評判だった水道水をボトル詰めし、無料で配布した。これが好評で、小樽のPRにもなるからと、2006年から500ミリ・リットル1本100円で販売を開始した。
その際、市はHP上で「炭酸ガスや酸素などがほどよく溶けていることなどから清涼感があります」と水道水の特徴をPRした。しかし、厚生労働省の「おいしい水研究会」が「おいしい水」の要件としていた炭酸の濃度は1リットル当たり3~30ミリ・グラムなのに、小樽市の水道水は当時2・5ミリ・グラム(昨年は3・3ミリ・グラム)しかなかった。
この程度の炭酸が含まれている水道は全国あちこちにあるといい、例えば旭川市は4・2ミリ・グラム(今年4月)もある。小樽独特の特色ではないのだ。
くだんのHPの表現は、「小樽の水」の販売中止の発表(20年6月)とともに取り下げられたが、それまでに引用され続けた「炭酸」が今も独り歩きしている格好だ。小樽市水道局は当時を振り返り、「おいしさを表現するための項目として選ぶべきは炭酸ではなかった。誤解を招くことになってしまった」と反省している。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240629-OYT1T50075/
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