雪国の地の利をいかし、冬にためておいた雪を夏の冷房に使う山形県川西町の複合文化施設の「雪冷房システム」が、猛暑の影響で雪がすべて解けたため、動かせなくなった。今年は猛烈な暑さが続き、9月に入っても残暑は厳しい。施設側は雪がなくならないよう気を配ってきたが、暑さが想定を上回った。
地元出身の作家・故井上ひさしさんの寄贈本をもとに開設された遅筆堂文庫や劇場、図書館などが入る町フレンドリープラザで2008年から雪冷房が使われ、6月下旬から約3カ月間稼働している。
隣接地に高さ約8メートル、長さ約15メートルでかまぼこ形の「エコスノードーム」が2棟立ち、計1千トン近い雪を貯蔵できる。断熱材が張られた内部は夏でもひんやり。2月下旬~3月に除雪作業で出た雪を運び、除雪機でドームの奥まで雪を飛ばしてためている。
「融解熱交換冷水循環方式」と呼ばれる仕組みで、雪解け水でプラザ内を循環する空調水を冷やし、冷たい空気をつくる。年間334時間の冷房能力があり、夏場を乗り切るには十分なはずだった。二酸化炭素の排出を抑制でき、電気代の節約にもつながっている。
「猛暑日が続き、『雪がもつかな』と冷や冷やしていた。今月9日に雪が完全になくなってしまった」と町の担当者は振り返る。
雪冷房はこれまでも異常気象に左右されてきた。
記録的な暖冬だった20年は、豪雪地帯の川西町でも雪を集められず、夏は電気冷房を使った。夏の暑さで9月上旬には雪がなくなった年もあった。その教訓もあって、稼働時間を調整するなど雪の維持には細心の注意を払ってきた。
プラザの栗田政弘館長は「例年なら、午前中は雪冷房を使わないで済むこともあったが、今年は朝から暑い日が多く、利用者のために稼働時間を延ばさざるをえなかった」と話す。
プラザでは9月中も様々な催しや演劇、コンサートが予定されており、図書館の利用者もいる。電気冷房に切り替えられるよう対応を急いでいる。(坂田達郎)
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