1:名無しさん




 反応の大きさは、その声のシェア率に比例している。どの世代にも満遍なく知られている私の声は、今のところ南ちゃんとETCが半々という感じだ。

 いやいや出世しましたなぁ~ETC! 

 今となってはETC音声に起用していただいてありがとうございます、という気持ちだけれど、その収録は、実は地獄の苦しみだった。

「収録の前に一つだけ約束してほしいことがあるんだけど」

 ETC音声収録の当日、機械音声の制作を専門にしている会社の社長さんが誰にも聞こえないように小さな声でこう切り出した。

「今まで何人もの声優さんとお仕事をさせていただいているんだけど、みんな怒って途中で帰っちゃうんだよね。だからこれだけは約束して、絶対に帰らないって」

「えっ? そうなんですか?」

 みんなというのが誰なのか、何に腹を立てて帰ってしまわれたのかはわからないけれど、私は今まで一度も仕事場でそういうことがなかったので、「はい、わかりました」と答えた。すると「絶対にだよ、約束だよ」と社長は念を押すように真剣に私の目を見つめてそう言った。

 そんなに……?と少し不安が胸をよぎったけれど、「わかりました、約束します。絶対にそんなことはしません」と答え、社長さんは安堵したようにうんうんとうなずいた。ところがスタジオに入って数分後、私はこの約束の重さを知ることとなる。

全文はこちら
https://bunshun.jp/articles/-/53224