防衛省が全国の小学校に2024年版防衛白書の子ども向け冊子「まるわかり!日本の防衛」を配布し、全日本教職員組合(全教)などが反発していた問題。2025年版は、配布を見送っていたが、小泉進次郎防衛相は、2026年版を小中高へと拡大して配布する方針を示している。防衛費が拡大の一途をたどる中、青少年をターゲットに政府の防衛政策に理解を求める手法に対し、教育現場からは懸念の声が上がる。(坂田奈央、松島京太)
◆「国際紛争を軍事的に解決することが当然のように描かれている」
「防衛省の『まるわかり日本の防衛』の小中高校生への配布反対」──。8月29日から「チェンジ・ドット・オーグ」で始まったオンライン署名。9月14日時点で1万2000人を超える賛同が集まり、大学教授や弁護士ら100人を超える識者が「賛同人」として名を連ねる。署名活動を行う団体の共同代表を務める大阪市の小学校教諭、伊賀正浩さん(59)は「防衛省が文部科学省の検定が必要ない副教材のような形で、抑止力や戦力といった内容を学校現場に持ち込もうとするのは看過できない」と訴える。
特に問題視するのは、中国・北朝鮮・ロシアの3カ国を名指しした上で「日本の安全保障環境が厳しくなっている」とした点だ。伊賀さんは「国際紛争を軍事的に解決することが当然のように描かれている」と指摘し「いま必要なのは外交的な解決の模索だと思う。社会科では日本国憲法の平和主義を教えるが、それとは真逆の内容を持ち込むことはできない」と危機感を訴える。
小泉防衛相は8月4日の会見で「まるわかり」に関し、「将来を担う小中高生の皆さんにも防衛省・自衛隊やわが国の防衛の重要性について理解を深めてもらうべく公表した」と説明。同日から都道府県教育委員会や、都道府県の私立学校を管轄する部局への相談を順次開始したとし、「冊子での配布を希望する教育委員会や学校に配布する」と表明した。
伊賀さんは9月末時点で集まった署名を全国の都道府県教委と大阪府内の市町村教委に送り、「防衛省から配布要請が来ても断ってほしい」と求めるという。
◆「防衛省が直接働きかける手法は、教育内容への不当な介入に」
香川県坂出市の中学校教諭の女性(38)も教育現場で不安を抱える一人。最近、中国四国防衛局から勤務する中学に配布案内のメールが届いた。冊子の中身を確認すると「『日本の周りには危険な国があるから防衛力を高めなければならない』と読めた」とし、こう強調する。「中国との歴史的な関係や交流など多角的な視点を踏まえて子どもに考えさせる授業を教員が構築するなら問題ない。しかし、一つの見方に立った冊子を学校を通して配布しようとすることには強い抵抗がある」
「まるわかり」は2021年に作成されて以降、防衛省ホームページで公開されてきた。同省は2024年版を初めて全国の教委に相談した上で小学校に配布。9自治体の約2400校に計約6100冊を配布したが、一部では不適切として配布を自粛した地域もあった。「こちら特報部」でもそうした事態を取り上げ、2025年版は配布されなかった。
今月4日に文科省で配布反対の会見を開いた全教の村田信子中央執行委員は「2026年版で初めて『外交』の文言が入ったが、武力抑止を強調する文脈の中で形骸化している。防衛省が教委や学校に直接働きかける手法は、教育内容への不当な介入にあたる」と訴えた。全教によれば、防衛省が2024年版に添付した「読後アンケート」に「総合的な学習の時間に使用」など活動実績を問う設問があり、実際に授業に使った事例が7件判明したという。
◆「冊子の中に自衛隊へのリクルートのような記載がある」
防衛省による配布依頼は順次始まっているが、各教委で対応は分かれている。
青森県教委は今月初めに東北防衛局から配布を希望する学校にメールアドレ…
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