(ブルームバーグ): 輸出を巡り、中国と欧州が真っ向から対立しそうな様相だ。
フランスのマクロン大統領は、中国との貿易不均衡を「耐え難い」と表現し、「欧州の産業にとって死活問題」だと危機感をあらわにした。フォンデアライエン欧州委員長も、欧州連合(EU)と中国の関係は「転換点に達した」との認識を示している。
中国政府は数日前、今年の対EU貿易黒字が3000億ドル(約46兆7900億円)に迫る勢いで、過去最大になっているとの統計を公表した。米国の関税を回避する動きを輸出業者が取った結果、中国のEU向け輸出は額にしてEUからの輸入の今や2倍余りに上った。
「中国ショックが欧州をついに直撃し始めた」と、EUのシンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)のアジアプログラム責任者、アンドリュー・スモール氏は述べた。「ここ数カ月で、緊急性のレベルははるかに上昇した。全てが公になってはいないが、深刻な危機対応会議が進んでいる」と明らかにした。同氏は対中政策でフォンデアライエン氏に助言を行っていたこともある。
スモール氏によると、これが過去10年以上で最も大きなEUの対中政策見直しにつながる可能性がある。EUの対中戦略はロシアのウクライナ侵攻やトランプ政権の関税政策などによって後回しにされてきたが、ようやく目が向けられ、「積もり積もった」対抗措置が準備されているという。
EUは今月、米国や中国との競争が激化する中で、世界の競合相手から域内の産業を守る計画を公表した。欧州委員会も貿易摩擦を乗り切り、域内市場にあふれる安価な製品に対抗する目的で、経済安全保障の担当機関を設立する構想を示した。
また域外からの投資に関して、技術移転や現地調達、バリューチェーン活用などの条件を設定することも提案する見込みだ。
メキシコ議会が今週、アジアからの輸入品に新たな関税を賦課することを最終承認するなど、他の主要経済国・地域も貿易上の障壁を設けており、EUに行動を促した格好だ。
EUには時間がない。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは、中国の輸出攻勢により来年からの4年間にドイツ、スペイン、イタリアの国内総生産(GDP)成長率はそれぞれ少なくとも0.2ポイント下押しされると見積もる。
欧州中央銀行(ECB)のエコノミストによると、中国の輸出による影響はユーロ圏の雇用のおよそ3分の1に相当する5000万人超に及ぶ可能性があるという。
「中国の輸出品に対する外国の反感は強まり、欧州では特にそうなるだろう」と、ロンドン拠点のヘッジファンド、ユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)は指摘。「爆発的な輸出拡大と安価な人民元の組み合わせは、持続不可能だ」と述べた。
中国にとっては、選択肢は他にほとんどない。20兆ドル規模のEU経済は、米国に輸出するはずだった製品を吸収できるだけの大きさを持つ数少ない市場だ。
米中の貿易対立が激化した今年、中国と対立すればどのような事態に陥るかEU当局者には明確になった。中国はレアアース(希土類)の圧倒的な供給支配力を活用し、電気自動車(EV)や風力発電機など多くの製造業を混乱に陥れた。欧州でも数多くの企業が生産停止を余儀なくされた。
EUは向こう1年に30億ユーロ(約5500億円)以上を投じて中国産の原材料への依存脱却を目指す方針だが、現実的にこれが有意な効果をもたらすには長い年月がかかる。
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