1:名無しさん




北欧諸国の国民の健康政策には、きわめて興味深い取り組みが数多く見られます。なかでも歯の健康をめぐる施策はその代表例といえるでしょう。スウェーデンは世界でも有数の歯科医療先進国として知られていますが、1970年代から虫歯や歯周病の予防を国家戦略として位置づけてきました。北欧では一般的に未成年であれば矯正治療を含めて無料で歯科医療を受けられますが、成人になると完全無料ではなく、年間で日本円にして5,000円前後の歯科治療手当が支給される仕組みになっています。検診費用は1回あたりおよそ1,000スウェーデンクローナ(約12,000~15,000円)と高額なため、若いうちから予防法やセルフケアを徹底し、将来にわたって健康を維持することが重視されます。実際、70歳時点で残っている自分の歯の平均本数は、日本では16.5本にとどまるのに対し、スウェーデンでは21本(※)と約5本の差があるのです。親知らずを除いた成人の歯は28本であることを踏まえると、国民の意識の差は決して小さくありません。

一方で、医療従事者をめぐる状況は深刻です。ノルウェー労働福祉庁(NAV)の調査によれば、2022年の時点で同国では看護師や助産師などが計6,600人不足しており、2024年には4,300人まで減少したものの、国の統計局は2040年には不足数が4万6,000人に達する可能性があると予測しています。人口が500万人余りの国でこれだけの数が不足するとなれば、国家的な危機と評されても不思議ではありません。移民労働者の受け入れも進んではいますが、看護師の場合は資格取得にノルウェー語能力が必須であることなどから、移民が占める割合はわずか5%程度にとどまっています。こうした背景から、待遇改善や職場環境の整備、さらには看護学校の入学要件や資格取得の基準を緩和するかどうかといった議論が盛んに行われています。隣国スウェーデンでも看護師の労働時間短縮を求めるストライキが実施されるなど、北欧全体で医療従事者の働き方改革が重要課題となっているのです。

https://sanko-ib.co.jp/mail/blog-oversea_07-hospital/