都内のイベント会場で11月、販売されたマフィンを食べた複数の客が腹痛や嘔吐(おうと)の症状を訴えた問題で、製造・販売した菓子店を所管する東京都の目黒区保健所が、店に対する行政処分を見送ったことが18日、わかった。
区保健所によると、マフィンから食中毒の原因となる細菌が検出されず、体調不良がマフィンによるものと断定できなかったという。識者は再発防止の観点から警鐘を鳴らす。
区保健所によると、マフィンを売った菓子店は11月11、12日に東京ビッグサイト(江東区)であったイベントで9種類のマフィン計約3千個を販売した。
SNS上などでは腹痛や嘔吐などを訴える複数の投稿があり、同様の連絡が区保健所に寄せられた。区保健所は同15日に店への立ち入り検査を実施。体調不良を訴えた7人の便やマフィン15個の成分を分析したが、食中毒の原因となる細菌は検出されなかったという。
食品衛生法では、病原微生物により汚染された食品を販売するなどした場合、保健所は営業停止処分を出すことができると定める。今回は細菌が検出されず、処分の根拠は得られなかった。
■「腐敗」根拠の処分は45年適用なし
https://www.asahi.com/articles/ASRDL4RRSRDLOXIE01D.html
区保健所の店への聞き取り調査で、マフィンは販売前に常温で最大5日間、保管されていたことが判明。「納豆のような臭いがし、糸を引いていた」という購入者の証言もあり、腐っていた疑いがある。
同法によれば、腐敗した食品を販売した場合についても行政処分を科すことができるが、区保健所は「『腐敗』の定義が法律上明確に定まっておらず、マフィンが腐敗していたことや健康被害がマフィンの腐敗によって起きたと断定するに至らなかった」と説明する。
都によると、都内では1978年にいなりずしを食べて食中毒を起こした事例を最後に、食品の腐敗を理由とした行政処分は実施されていない。
「同じ事が起こりうる」
食品衛生法に詳しい岩月泰頼弁護士によれば、「腐敗」とは一般的に、窒素を含む有機物が風通しの悪い場所で分解していく過程を指す。しかし客観的に食品のどのような状況が「腐敗」であるのか法律上では明確に示されていないといい、「わかりやすい基準が必要だ」と言う。
岩月弁護士は、「体調不良を引き起こした原因が特定できなかったことは大きな問題だ」とも指摘。どのような製造過程で体に悪影響を及ぼすものが生じたのかがわからなければ、「また同じことが起こりうる」と懸念を示す。(福岡龍一郎、中野浩至)
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