新型コロナワクチンを2回接種してから数カ月がたち、効果の低下が心配される中、ワクチンでできたウイルスを阻害する中和抗体がどのくらい残っているのだろうか。記者(54)=モデルナ製を接種=は月1回、取材で度々訪れる福島県の病院で自費で抗体の量(抗体価)を検査。傾向が見えてきたので報告する。(山川剛史)
◆これが「ブースター効果」か
図の通り、抗体価の推移はジェットコースターのようだ。1回目接種後の1ミリリットル当たり約800ユニットから、2回目の接種後は約1万1000ユニットと13倍以上に急増した。「ブースター効果」とはこれかと実感した。数値は試薬によって大きく異なるが、同じ試薬を使った早期接種者のデータと比べると、上位の集団に入っていた。
喜んだのもつかの間、1カ月たつと半分以下に。また1カ月するとさらに半分近くまで低下した。
知人で横浜市在住の大学教員、鎌田素之もとゆきさん(48)=ファイザー製を接種=に同じ試薬の自費検査をしてもらっていたが、低下スピードは記者より速かった。
◆急減から緩やかに
ただ、表計算ソフトでグラフ化してみると、「1カ月で半減」の単純な直線ではなく、いったん急減した後は下げスピードが大幅に弱まったことが2人のデータに共通していた。「低空飛行ながら、しばらくは持ちこたえられそう」と少しほっとした。
本紙の産業医で、慶応大感染症学教室の長谷川直樹教授にデータを見てもらうと、「典型的なパターン。ワクチンの効果かどうかは分からないが、これまでコロナに感染してこなかったことは確かだ」。
◆未知の領域、個人差も大
抗体価がどれだけあればいいのか、変異株にも有効なのかも聞いたが、「はっきりしたことはまだ分かっていない。抗体があるに越したことはない。対抗手段はワクチンなどごく限られている」と話した。
そもそも人によってワクチンによる抗体の獲得状況は大きく異なる。記者の父親(87)にも2回接種後に同じ試薬による検査をしてもらったが、記者の5分の1の1ミリリットル当たり約2000ユニット。記者に病院を紹介してくれた福島県の白髭幸雄さん(71)は18分の1の約600ユニットしかなく、接種から約半年後の現在は約200ユニットまで減った。
日本でも3回目の接種が始まったが、医療従事者など早期に接種した人たちの抗体価は早かった分確実に下がっている。鎌田さんは「どういう人の抗体価が低いのか科学的なデータに基づき、3回目を進めてほしい」と話した。
東京新聞 2021年12月6日 06時00分
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