大麻由来の医薬品の解禁や、大麻の使用罪を新たに設ける大麻取締法などの改正案が成立する見通しとなりました。使用罪の創設は、若者の間で広がる乱用を防ぐことにつながるとされます。しかし、依存症治療に携わる国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部長の松本俊彦さんは「厳罰化より支援の充実が必要」といいます。使用罪創設がもたらす影響や大麻をめぐる現状について聞きました。
――今回の法改正では、大麻由来の薬が国内でも使えるようになる一方、大麻の使用罪が設けられます。どう受け止めていますか。 治療の選択肢として、効果のある薬が使えるようになることは、非常に喜ばしいと思います。一方で国際的には、薬物政策の「厳罰化」に対する反省が高まっています。「使用罪」の創設は、もう少し丁寧な議論が必要だったのではないでしょうか。
――どういうことでしょう。
大麻の「完全無罪」「合法化」や、「大麻は安全だ」と言っているわけではありません。国際的な流れや、私自身の臨床現場での実感を踏まえると、使用罪の創設は拙速ではないかと考えます。
――国際的な流れとは。
国連は2016年の麻薬特別総会で、「薬物問題は司法問題ではなく、健康問題とすべきだ」と決議しました。今年6月には、国連人権高等弁務官事務所が、懲罰的な薬物政策をやめるよう勧告しています。刑罰が薬物に悩む人の医療アクセスを妨げ、様々な人権侵害を起こしている、と指摘しています。
――大麻を「合法化」する国も出ています。
アメリカでは、「大麻使用の非犯罪化」を公約に掲げて当選したバイデン大統領が昨年、大麻の単純所持に関する過去の犯罪について、全て恩赦すると発表しました。カナダは、個人で使う大麻を所持量を限って合法化しました。闇ルートへの流通や犯罪組織に資金が流れるのを抑え、未成年が使うのを防ぐために、このような対応をしたのでしょう。
■大麻使用の背景に「生きづらさ」
――日本での大麻使用の特徴は。
国内の薬物乱用・依存の実態把握のための全国調査では、15~64歳の一般住民における違法薬物の生涯経験率が最も高いのは大麻で、1・4%(約128万人)です。一方で、医療にアクセスする人は限られています。大麻の短期的な使用では、急…
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https://www.asahi.com/articles/ASRD45DW3RCFUTFL00B.html
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