◼共用スペースは落ち着ける場所ではなくなり…
「子どもでいっぱい」状態はタワマンに限らず、ここ数年来、どこのマンションにもみられる現象らしい。「人間関係の希薄化から、自宅によその子を入れたがらない親が増えたことが原因だ」と専門家は推測する。<中略>
同級生の家に行くにしても、前もって親同士が電話で訪問の予約を取り合うのが常識とされ、子どもの怪我や家庭内の器物損壊を懸念して保険をかけあう時代である。
下校時に不在の共働きの親たちは、子どもにビルの入り口を通過するオートロックキーは持たせても、自宅の鍵を与えたがらない。鍵の紛失を心配したり、仕事から帰宅した時に室内が乱雑にされているのが嫌なのだろう。部屋にこもってテレビゲームやネット依存にさせないよう、大人の視線があるオープンスペースにわが子を置いておきたいのである。
それにはコンシェルジュがいるカフェが最適だし、元々、居間の延長のつもりで共用施設が充実しているところを買ったのだから有効利用しようと思いつく。
幼稚園親子らと入れ替わるようにして小学生が入り、飲み物を注文して居場所を占拠。閉店の21時まで宿題や読書、スマホでアニメを見る子らもいて「バータイム」は霞んでしまった。
◼住人でない親子もたむろし「無料待合室」状態に
飲食の金を持たされていない子どもたちは、ロビー横の応接スペースや共用施設のジムやプールのロッカールーム、休憩コーナーにたむろして、おしゃべりやゲームで親が帰宅するまでの時間を過ごす。外部から来た子らも加わるから大人数になるが、その子どもたちの親たちも「冷暖房完備、大人の目が行き届くタワマン無料待合室」をあてにしているのではと勘繰る向きもあるらしい。
目に余って、一度、よく見かける5年生くらいの子に「きみ、名前と号室は?」と尋ねたら、「個人情報だから言えません」と即答されたと、田中さんは苦笑する。世代交代は既成事実で、問題はより複雑になっているのだとも嘆く。
「タワマンの住人でもない親子たちがカフェを占拠するのは納得できない」と言うクレームが続出し、住民総会に議案が出されたが、談論風発の末、「住む権利、共同生活の常識、子育て支援」の意味合いを巡って世代ごとに意見の分断があり、結論は先送りになった。
「いっそカフェを廃止したら」との意見も出たというから、まだ一波乱おきそうである。
品川区の主要駅近くに15年ほど前に建てられた38階建1000戸ほどのタワマンでも、よく似た問題が起きていた。
◼予約が取れない共用部人気の理由
このタワマンは1階と2階にテナントが入っているので、カフェもジムも無い。しかも周囲はビルだらけで公園も遊び場も無く、タワマンの中には3歳児以下のプレイルームがあるだけだ。
そこで子どもを持つ親たちは、2時間1000円で借りられるパーティールームや会議室、ゲストルーム、和室等を午後遅くから予約して数家族でシェアし、子どもの遊び場や放課後のたむろ場にする「裏技」を思いついたらしい。
「何度もフロントで予約を申し込んでも、一度も取れたことがない」とそのタワマンに住む筆者の知人が嘆いていたが、蓋を開ければ簡単な理由だったのだ。
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https://gendai.media/articles/-/108726
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