オープン当初は「低価格・高品質」で客の支持を集めた新興ハンバーガー店は、なぜ2年足らずで全店閉店してしまったのか?<中略>
最初に違和感を覚えたのは、店の前に置かれた看板の文字を目にしたときだった。「ゆったりソファー席! 奥に広々50席」と書いてある。一般的な飲食店であれば普通のうたい文句だが、ブルースターはテークアウト専門ではなかったか。
やや戸惑いながらも、かつて1号店の開業時に使ったスマホアプリで注文しようとした。すると、なぜかアプリの再ダウンロードを求められてしまう。注文用のセルフレジが店内に置かれているのが目に入ったので、そちらで注文することにした。画面をタッチしてメニューを選ぶと、支払いに「現金」の選択肢が出てくる。どうやら「完全キャッシュレス」もやめたようだ。
待つこと数分、出来上がったハンバーガーは1号店で食べたときのものとは大きく変わっていた。以前は一般的なハンバーガー店と同程度の片手で持ちやすいサイズだったが、一回り大きく、真上から串を刺さなければ倒れそうなものになった。<中略>
止められなかった改悪に、思慮不足も重なった。開業以来、積み重ねてきた約3万人の会員データを実質的に失ったのだ。
現金が使えるセルフレジを新たに導入しようとしたところ、キャッシュレスのセルフレジやスマホアプリの開発を任せてきた企業では対応できないことが分かった。新たに現金対応のセルフレジだけを開発すると、複数のシステムから並行して注文が入ることになってしまい、調理現場に混乱を招く恐れがある。注文情報を円滑に伝達するためにはスマホアプリとセルフレジの両方を1社に任せた方がいいという方針に傾いた。結局、現金対応のセルフレジの開発を新たな企業に委託し、その企業がスマホアプリの改修も請け負うことになった。
その結果、ブルースターは会員の情報や注文履歴のデータを引き継げなくなった。一度アプリをインストールしていた会員たちも、インストールし直してクレジットカードなどを再登録する必要が出てしまった。つかみかけた常連客の離反を招いた上に、会員にプッシュ通知でクーポンを届けるといった再来店を促す施策も採れなくなった。新たに委託した企業は、現金を取り扱うシステムの開発は得意でも、スマホアプリの開発は不慣れ。「ブルースターの新しい注文アプリは使い勝手が悪くなった」と外食関係者の間で話題になるほどだった。
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https://bunshun.jp/articles/-/60702
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