イタリアの生ハムやドイツのソーセージといった豚肉製品の日本への輸入が1年以上ストップしている。輸入停止の長期化により、国内の専門店ではイタリア産商品の在庫が底を突きかけ、ファミリーレストラン「サイゼリヤ」では人気メニューが次々と姿を消している。混乱する現場の実情を取材した。
突然の輸入停止通告
「輸入が止まりましたよ」。2022年1月。生ハムやサラミを中心にした加工肉の専門店「SALUMERIA 69(サルメリア ロッキュー)」(東京・調布市)の新町賀信(よしのぶ)店長(53)のもとに、輸入商社の旧知の担当者から電話連絡が入った。
イタリアで家畜伝染病が発生し、豚肉やその加工品の輸入がストップしたのだ。それまで日本の輸入する生ハムは、イタリア産が約7割を占めていた。そして始まったのは、在庫のイタリア産豚肉製品の「争奪戦」だった。
注文を受けてからその場でスライスする、こだわりの商品が人気のこの店では、扱っていた商品の約9割がイタリア産だった。「これはかなりまずい状況だ」。そこから新町さんは、可能な限り多くの生ハムやサラミの原木の購入予約を急ぎ、輸入商社や問屋から一気に買い付けた。多額の支払いを抱えたため「キャッシュフロー(資金繰り)はめちゃくちゃな状態になった。去年は売上額のほぼ全てが、仕入れにかかった額で消えた」と苦笑する。
それから1年あまり。取材に訪れた23年2月12日時点で、イタリア産の在庫はいよいよ底を突きかけていた。
現在、店ではスペイン産やフランス産、国産の商品と組み合わせてなんとか販売を続けているが、新町さんによるとイタリア産は「安くてクオリティー(品質)が非常に高く、日本人の舌に特に合っている」という。スペイン産やフランス産で同様の品質やおいしさのものを見つけ出すのは簡単ではないが、品質は落とすわけにはいかない。
その上、ロシアのウクライナ侵攻に伴う欧州のエネルギー価格高騰も相まって輸入価格が上がり、販売価格とのバランスにも苦慮しているという。このため、かつて50~60種類あった品数は半数ほどになった。このうち、イタリア産はいまや5種類にまで減った。「一刻も早く輸入が再開されてほしい」。新町さんはその日を待ちわびる。
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https://mainichi.jp/articles/20230217/k00/00m/020/188000c