子のいない夫婦…「全遺産を妻へ」で弟妹騒然!遺言書に異議をとなえる方法は?【税理士が解説】
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遺言書の内容に納得がいかないとき、なんとかして異議をとなえることはできないのでしょうか。岡野雄志税理士事務所の岡野雄志税理士が、子どもがいない「おふたりさま夫婦」の相続において起こりえる、配偶者と兄弟姉妹の間のトラブルについて解説します。<中略>
「身の回りの世話」をしてくれた妻に、夫として「将来の生活費の心配」はさせたくない。そういう思いから、お互いを支え合ってきた大人の夫婦として、自分の遺産をすべて配偶者に渡したいと考えるのは、自然な心情と言えるかもしれません。
ところで、配偶者は常に相続人となることが民法で定められています。そのほかの相続順位としては、第1順位が子およびその代襲相続人(孫など)、第2順位が直系尊属(父母や祖父母など)です。シニア婚でお子さんがなく、両親がすでに他界している場合、第3順位の兄弟姉妹およびその代襲相続人(甥や姪など)が相続人となります。
では、こういった「おふたりさま相続」の場合、被相続人(財産を遺して亡くなった方)が「配偶者に全財産を相続させる」という遺言書を作成していたら……。その遺言内容は、法律的に成立するのでしょうか。
■兄弟姉妹は法定相続人になれるが遺留分は認められない
相続人が配偶者、弟1名、妹1名として、民法で示されている「法定相続分」に従って、相続財産を配分すると考えてみましょう。相続割合は以下のようになります。
配偶者:3/4
弟と妹:各1/8(残り1/4を1/2ずつ)
そして、配偶者以外の相続人が、「全財産を配偶者へ」という遺言内容に納得しないとしましょう。第1順位の子や孫、第2順位の父母や祖父母なら、法定相続人に最低限保障される遺産取得分「遺留分」を主張し、家庭裁判所を通して「遺留分侵害額請求」ができます。
ところが、第3順位の兄弟姉妹にはその権利がありません。民法第9章「遺留分」に関する第1042条(遺留分の帰属及びその割合)には、以下の文言があります。
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
なぜ、兄弟姉妹には「遺留分」が認められていないのでしょうか。民法第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)の、一の文言に注目してみましょう。
次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
つまり、親族の相続権は被相続人と「近い者」が優先され、兄弟姉妹は両親や祖父母、子や孫といった直系の親族よりも遠い関係だからということになります。
また、民法第752条には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。経済的にもお互いに暮らしを支え合う最も近い関係であることから、常に配偶者は相続人として優先権が与えられているのです。
そういう意味では、相続財産をすべて配偶者に渡したい「おふたりさま相続」の場合、「配偶者に全財産を相続させる」と遺言書に残すことは非常に有効と言えます。民法第908条にも以下のような(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)が定められています。
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
では、兄弟姉妹がどうしても遺言内容に不満な場合、異議をとなえる方法はないのでしょうか。…
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