苦戦する日本勢のなかでも、日産の減少幅は突出している。調査会社マークラインズによると、日産の今年1〜9月の中国での新車販売台数は前年同期比で26%減った。ホンダは同21%減、トヨタ自動車は同4%減に踏みとどまる。ハイブリッド車(HV)が堅調なトヨタは「中国での販売網や営業力が強い」(自動車アナリスト)点が下支えしている。
足元でも明暗が分かれる。ホンダは9月下旬から10月上旬の中国の国慶節(建国記念日)に伴う連休に実施した値引きなどの販促活動が奏功し、10月の中国新車販売は前年同月に比べて23%増えた。ホンダ、トヨタは2カ月連続増に転じており、5カ月連続で減少が続く日産の厳しさが鮮明になっている。
中国では1〜9月の新エネルギー車の新車販売台数だけで627万台と、すでに日本の年間の新車販売(約430万台)を上回る規模に育っている。「日本車のEV出遅れ」が中国市場の苦戦要因とされてきたが、より詳細に見るともう一つの面も浮かんでくる。
それが、プラグインハイブリッド車(PHV)の投入遅れだ。中国新エネ車の新車販売のうち、PHVのシェアは3割を占めており、必ずしもEV一辺倒になっていない。電動モーターとエンジンを組み合わせたPHVは充電も給油もできるため、EVの航続距離に対する不安を解消する車種として中国で人気が伸びている。
現地メーカーもPHVに力を入れる。中国EV大手の比亜迪(BYD)は22年の販売台数の180万台のうち、約半数がPHVだった。BYDはガソリン車並みに価格を抑えたPHVを売ることで、日欧米メーカーのシェアを奪ってきた。
PHVは本来、三菱自動車のSUV「アウトランダー」を筆頭に日本メーカーも先行していた分野だ。三菱自は中国での販売不振による生産停止が続き、10月に中国生産から撤退すると発表した。「三菱自が22年に投入したアウトランダーがPHVでなく、ガソリンタイプだったのが戦略ミスだった」と関係者は指摘する。
日本車が中国で不振である背景には、EV戦略だけではなく、市場変化に対するきめ細かい戦略や投入スピードが欠けていた点にあるといえそうだ。
日産は中国で巻き返しを急ぐ。11月9日には、26年までに中国で日産ブランドの新エネ車4車種を新たに導入する強化策を発表した。「このうち日産初となるPHVモデルも含む」(内田社長)と強調し、中国の消費者ニーズに合うようにすべて現地開発する。
日産、際立つ中国不振 EV出遅れだけでない需要とのズレ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1939H0Z11C23A2000000/