「性能はシリコン半導体の10倍以上⁉」青色LEDノーベル物理学受賞者が進める
「窒化ガリウム・半導体革命」《電力損失大幅低減》《大容量無線通信》
「『サイエンスZERO』20周年スペシャル」取材班
「窒化ガリウム」の結晶を、世界で初めて高品質な水準で作ることに成功し、2014年「青色LED」の研究でノーベル物理学賞を受賞した天野浩さん。省エネで環境にやさしい青色LEDは、世界を照らす新しい光として人類に多大な貢献をしました。
いま天野さんは、青色LEDの材料「窒化ガリウム」の可能性をさらに広げ、電気自動車や大容量無線通信技術への活用が期待される「次世代パワー半導体」の開発を進めています。その挑戦の根底にはいつも、「社会に役立つ研究をしたい」という強い思いがありました。自身の20年を振り返るとともに、「窒化ガリウム」が支える青色LEDや次世代パワー半導体開発の道すじと今後の可能性を伺いました。
■ノーベル物理学賞受賞の「窒化ガリウム結晶」とは?
―「窒化ガリウム」とはどんなものなのか教えてください。
窒素とガリウムの原子が規則正しく並んだ結晶が窒化ガリウムです。私がまだ学生だった当時は、窒化ガリウムのきれいな結晶を作ることはとても難しく、ほとんど研究が進んでいませんでしたが、われわれの研究できれいな結晶を安定して作ることができるようになりました。
窒化ガリウムは原子同士の結合が強く、電流をたくさん流したり、高い電圧の電気信号を制御できるという特徴を持ちます。ノーベル賞受賞は窒化ガリウムの「きれいな結晶」がきっかけになりました。結晶を作るときは、まず土台となる基盤の結晶を置いて、その上に必要な物質をふきかけて結晶の層を作っていきます。最初、土台となるサファイア基板の上に直接、窒化ガリウムの結晶を作ろうとしたのですが、そうするとザラザラとしたすりガラスのような「汚い結晶」になってしまいました。
きれいな結晶にならなかった理由は、基盤のサファイアとその上の窒化ガリウムの「原子の並び方の間隔が違う」ためでした。<中略>
一方、窒化ガリウムの場合は、シリコンほど細かくしなくても、もともとの材質に強い性質があったり、さまざまな用途に使えるということが期待できます。
例えば先ほども申し上げましたが、シリコンに比べてとても結合が強く、電流をたくさん流したり、あるいは高い電圧の電気信号を扱うことができます。電圧で言うと、シリコンだと1000ボルトまでもたないものが、窒化ガリウムだと同じ厚さでも1万ボルトまで耐えられる。これは、これでシリコンと同じ構造の物を作れば、性能は10倍以上になるということなんです。
非常にシンプルにした例ですが、例えば、「100m走」で言うと、「シリコンが10秒かかるのが窒化ガリウムだと1秒で行けちゃう」というような、それぐらい優れたアスリートが窒化ガリウム、ということなんですね。
また熱の発生もおさえられる材料であるため、電力の損失が少なく、省エネになると期待されています。未来を変えるポテンシャルがある材料ですが、それを実現するためには、シリコンと同じぐらい品質の優れた結晶と、それから加工技術が必要で、ようやくその技術課題は解決し、社会実装するための準備にさしかかった段階です。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/41dbc3d8d038de9ce76b0a975db4089d54cf3167
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