「痴漢冤罪(えんざい)」と題されたショートフィルムがネット上で話題を呼んでいる。「怖い」「リアル」といった率直な反応や、「本当にありそう」「実際にはこんなこと起こらない」という議論、「女性に対するヘイトスピーチ」「女性嫌悪を助長してる」といった批判の声も上がっている。問題のショートフィルムはどういった意図で作られたものなのか。動画を制作した「こねこフィルム」の三野和比古代表と三野龍一監督に動画に込めた真意を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
動画は1分30秒ほどのショートフィルムで、男性が電車内で居眠りをしてもたれかかってきた女性を起こしたところ、「痴漢ですよ」と声を上げられ、「居眠りされてもたれかかってきたんで、頭触って起こしました」「起こしただけじゃないか!」と説明するも、「それだけじゃないです!」「ウソつくのやめてください!!」という女性の声で周囲の乗客から取り押さえられるという内容のもの。YouTubeとTikTokで公開されたものが先月28日にX上に無断転載され、大きく拡散。一部から批判の声が上がるなど、炎上状態となっている。
問題の動画はどういった目的で作られたものなのか。制作元のこねこフィルムは、映画やドラマの現場で経験を積んだクリエーターたちが新たな価値を創造するために今年6月に立ち上げたショートフィルム制作団体。TikTokなど新しい映像配信メディアを通して映画クオリティーのショートドラマを発信、映画文化を盛り上げていく活動を行っており、作品数はすでに20本以上にのぼる。
「普段は映画やドラマを舞台に活躍するプロの役者やスタッフたちが、その魅力を幅広い世代に伝えるために始めたプロジェクトです。作品のテーマは脚本家や監督などの立場関係なく、みんなで意見を出し合い企画しています。今回のように社会風刺的な作品もあれば、恋愛ものやホラーなど、ジャンルはさまざまです」(三野代表)
動画について「誤解を恐れずに言うと、実のところテーマは何でもよかった」と語るのは、今回の企画を提案した三野監督。「作品の解釈は見る人次第で、本来制作意図などは作り手の口から話したいことではありませんが、世の中には立場や見方がひとつ変われば白黒や善悪の判断がひっくり返ることがたくさんある。それをショートフィルムで表現しようと思い、たまたま題材に選んだのが痴漢冤罪だっただけ。世の中の痴漢や痴漢冤罪に対してことさらに発信したり、ましてや分断をあおるような意図はまったくありませんでした」と説明する。
一連の炎上について、「これはショートフィルム、映画なので、あくまでエンタメです。TikTokというエンタメ動画のプラットフォーム上で発表したものが、Xという言論のSNSに無断転載されたことは著作権侵害に当たりますし、大前提のエンタメという枠組みから切り離され主義主張のために利用されてしまったことは想定外で不本意でした」と三野代表。
三野監督も「作品はあくまでフィクションで、たとえ実際に起こりそうに見えてたとしても、それはプロの演技や演出によるものです。ひょっとしたら起こり得るかもしれないという最悪の結末を、ドラマチックに演出して作品にしています。『切り取られた内容による集団心理の暴走』という今回の炎上は、ある意味作品のテーマ通りではありますが、フィクションはフィクションとして、もう少し冷静さと余裕を持って見てほしかったですね」と語る。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/83dde5ec40634dc349d600c77d61ec1c2f1ee2ec
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