子どものみで外出・留守番をさせることは「放置」で虐待に当たるとして禁止する県虐待禁止条例改正案が埼玉県議会に提案され、波紋を広げている。提出した自民党県議団は、車中への置き去りや転落事故などの例を挙げて「放置は虐待、との意識改革を促す」と主張。一方、県民からは「保護者に仕事を辞めろというのか」などと抗議の声が上がり、成立を防ごうと署名活動が始まった。
◆「放置」見つけたら県民に通報義務も
改正案では、小学3年以下の子どもを自宅などに残して外出することを保護者などに禁じている。4日の本会議の質疑では具体例として、子どもたちだけで公園で遊ばせたり、学校の登下校をさせたり、高校生のきょうだいに預けて出かけたりすることも違反になると説明。小学4~6年についても「努力義務」とし、県民には放置されている子どもの通報義務を課した。
自民側は、熱中症や火災、誘拐などの危険性を挙げ、どこでも短時間であっても「生命、身体に危険がなく、養護者がすぐに駆けつけられる状況」でなければ放置とし、罰則規定はないものの「放置は虐待だと意識改革を進めるための理念条例だ」と強調した。
◆「理念には賛成だが」…ひとり親・共働きは?
改正案の方針は、9月に議会運営委員会でも説明されたが、他会派の議員は「車内への置き去りなどの対策と思っていた」という。4日の説明に「ここまで禁止対象が広いとは」と驚きの声が上がった。党内からも「理念は賛成だが、一生懸命働くひとり親や共働きの人を追い詰めることになる。『埼玉県で子育てはしたくない』とならないか」と懸念も出ている。
改正案は、子どもを放置しないために、県に保育所や学童保育の整備を求めるが、昨年度の県内の小学生の待機児童は1554人。県幹部からも「施行日(2024年4月1日)までの解消は難しい」「条例順守は難しく、理念すら守られなくなるのでは」との声が上がる。
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