不適切な契約が問題となっている農業協同組合(JA)の共済事業では、高齢者とのトラブルが目立っている。川崎市の80代女性が本紙に語った事例では、自身が知らないうちに元の契約が勝手に解約され、新たな契約に変更されていたという。JA側の契約の意向確認や商品説明が不十分だった可能性がある。(押川恵理子)
JA共済を巡る問題 共済契約の過度なノルマ達成を求められたJA職員が、本来不必要な契約を自腹で結ぶ「自爆営業」が相次ぎ、農林水産省は今年2月から共済事業の監督を強化した。職員から不適切な契約の申し出があればJAは都道府県からの調査対象になる。無断契約など顧客に対する不適切な契約も各地で判明。相次ぐ不祥事を受けて政府の規制改革推進会議は今年6月、自爆営業などを防ぐためノルマ設定の見直しやハラスメント防止など抜本策を講じるよう農水省に求めた。同省は具体策を検討している。
◆知らない間に別契約…思い出す「はんこを貸して」
「(契約は)ありません」。女性(85)は3年前、満期が迫る自身の契約を確認するためJAセレサ川崎に連絡すると、電話口の職員からこう告げられ驚いた。貯蓄性商品である「一時払養老生命共済」は知らないうちに解約され、その代わり、女性の次男を被共済者とする終身共済が新たに契約されていた。
女性の疑問に対して、JA側は「養老共済の被共済者を(女性側から)変更したいと申し出があり、変更できないため解約し、終身共済に変更した。その際、養老の共済証書を紛失したため、紛失届を提出してもらって解約手続きをした」と説明した。
◆「代理で押印することは禁止していない」
だが、女性は養老共済の解約を希望していないという。紛失したとされる養老共済の証書も手元にきちんと保管し、紛失届を出した覚えもない。「JA職員に『はんこを貸して』と何度か言われ、渡したことがある」と振り返る。
本紙の取材に対して、JAセレサ川崎は「(一般論として)代理で押印することは禁止していないが、押印を渉外担当が進んですることはない」と説明。この川崎の個別事例については「契約者本人にしか答えない」とコメントした。
◆「適切な契約ではない」
女性側は元の契約に戻すよう再三抗議したが、協議は平行線。望んでいない終身共済は解約し、掛け金の総支払額より少ない解約返戻金しか受け取れなかった。女性は「夜も昼も眠れないほど落ち込んだ。この問題を広めないと、どんどん高齢者がターゲットにされてしまう」と懸念。女性の長男(60)も「このままではJAの逃げ得だ」と憤る。
全文はこちら
https://www.tokyo-np.co.jp/article/276703
続きを読む