詩は勝っていた? パリ五輪の柔道女子52キロ級(28日、シャン・ド・マルス・アリーナ)の2回戦で、連覇を狙った阿部詩(24=パーク24)が世界ランキング1位のディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)に一本負け。金メダル大本命の敗戦は、日本中に衝撃を与えた。
技ありと指導2つを奪って圧勝ムードが漂う中、相手の捨て身技で畳に叩きつけられた。多くの柔道関係者が「絶対に勝つ」としていた女子のエースはなぜ敗れたのか。バルセロナ五輪95キロ超級銀メダルの〝元暴走王〟小川直也氏(56)は「詩選手はかわいそうのひと言。これも審判の問題になるけど、指導2をもらっていた時に、相手に偽装の技があって、技がすっぽ抜けた場面があったでしょ。本来ならあそこで、相手の反則負けだった。今のルールなら、あれは明らかな反則。審判がおかしいという意味では、あそこの判定は問題」と指摘する。
確かに指導2つをもらっていた相手の背負い投げは中途半端な形で「偽装攻撃」、いわゆる「かけ逃げ」ととられてもおかしくなかった。これで指導をとられれば、相手は3つ目の反則で試合は詩の勝ちで終わっていたのだ。小川氏は「あれは誰が見ても、10人が10人見ても反則」と言い切る。
前日の男子60キロ級では永山竜樹(SBC湘南美容クリニック)が絞め技で一本負けした際に、主審が「待て」をかけたにもかかわらず、相手のガリゴス(スペイン)が絞め技を続けて永山を失神させた。これが「大誤審」と波紋を呼んだが、詩の試合でも〝誤審〟があったという。
では、なぜ審判団は偽装攻撃を見逃したのか。小川氏は「(審判に)詩選手への期待感があったのでは。詩選手は強すぎるということで、きれいに技で投げて決めてほしかったのかもしれない。不運に不運が積み重なって、大きな悲劇が生まれたと思うね」と推察する。
決して力負けではないだけに悔しさは募る。詩は今後について「落ち着いてから考えたい」と語るにとどめたが、元暴走王は「ビッグカムバックを望みたい。彼女は泣き崩れたけど、4年後に取り返すチャンスをもらったと思ってもう一度チャレンジしてほしい」とエールを送っていた。
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