最近、タワーマンション(タワマン)を巡る原稿や出演の依頼が多くなった。世間がそれだけタワマンに対する関心を高めているということか。
私がこの物件に関する否定的な言辞を世間に公表し始めたのは10年以上前のこと。その頃、世の中の風潮はタワマン礼賛一色であったような記憶がある。
長らく東京に住んでいるが、生まれ育ったのは京都市の左京区というところ。地べたから50メートルほど上にある吉田山の頂上よりも高いところをほとんど知らない身としては、基本が地上60メートル以上の超高層マンションは、かなり珍しい存在だった。
東京に来て、池袋のサンシャインタワーくらいは物珍しさでのぼってみたものの、人間が住むところが高層であることには違和感がアリアリだった。
最低でも地上から60メートル、高ければ180メートルに達するタワマンが、今ではこの街にニョキニョキと建っている。そこに喜んで住む人もわんさかいる。
しかし、ここのところ、そのタワマンに対する否定的な記事をネットメディアでは毎日のように目にするようになった。「タワマンを無理して買ったけれどローン返済が大変」とか、「ヒエラルキー意識が強すぎるご近所付き合いに疲れた」といった内容が主流。中には「エレベーター待ちが20分で不便」、「隣や上の階の騒音がうるさ過ぎ」といった内容も散見する。
それぞれあり得る話だ。タワマンは壁も床も天井も、普通のマンションより薄い。外壁は工場で作られたALCパネルだ。莫大な費用が掛かる大規模修繕工事も必要不可欠。合理的に考えれば、都心の緊密集住エリアでないと「建てるべきではない」住形態だが、今は空き地が広がる湾岸の埋め立て地にも普通に建っている。
そういうことに、強烈な違和感を抱いて十数年前から住宅・不動産を主なフィールドとするジャーナリズム活動を始めた。当時は誰も振り向かなかったが、今は共感する人がそれなりの割合になったということだろう。
タワマンには、メリットもデメリットもある。私は合理的に考えると選ぶべきではないと考えるが、最終的には各人の価値観である。さまざまなデメリットに目をつむってでも、そこに住みたいと考えるのなら、買うなり借りるなりして住めばよい。
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