イーロン・マスクは、2023年10月のテスラの決算説明会で「100万台以上のサイバートラックの予約を獲得した」と豪語していたが、SF映画から飛び出してきたかのような外観が特徴のこの電動トラックの販売台数は、マスクが当初予測した数字を笑ってしまうほど下回っている。
過去13カ月で8回もリコールされたこのピックアップトラックは、品質への悪評や好みが分かれる外観に加えて、マスクのトランプ政権での役割に抗議する「反テスラ」のデモ活動の象徴にもなっている。テスラは、サイバートラックの年間販売が25万台に達する可能性があると予測していたが、最初の1年間となった2024年の販売は4万台にも届かなかった。しかも、調査会社のデータによると、1月と2月の販売はさらに落ち込んでおり、2025年の販売台数も増加の兆しはまったく見えていない。
コンサルティング会社CARLABのエリック・ノーブル社長は「これは、エドセルと並ぶ歴史的失敗作になる」と、フォードが1958年に市場に投入した車両を引き合いに出して語った。フォードが年間20万台の販売を見込んでいたエドセルは、実際には6万3000台しか売れなかったが、サイバートラックの売れ行きはエドセルよりもはるかに悪い。
■回収不可能な「巨額投資」
テスラは、大量の販売台数を見越して、オースティンのギガファクトリーを、年間最大25万台のサイバートラックを製造できるように改修した。しかし、そのための投資は回収できそうにない。
「マスクは、ただ『たくさん売りたい』と述べただけではない。実際に大量生産できる体制を整えた」と語るのは、自動車業界のアドバイザリー企業GMオートモーティブを率いるグレン・マーサーだ。そして、その「大量の需要がある」という前提は愚かなものだった。巨大すぎるサイバートラックは、複数の国の安全基準に適合しておらず、輸出で販売を伸ばすこともできない。「販売台数は少ないし、海外の市場がそれを救うこともなさそうだ。テスラにとって大きな市場だった中国でさえ、今回は難しい」とマーサーは指摘した。
マスクは、この車両の量産開始に先立ち「従来のピックアップトラックのような外観にはしたくない」と明言していた。「ピックアップトラックは、100年もの間、変わりがないが、サイバートラックは他のどんな車両にも似ていない」と彼は述べていた。マスクはまた、2019年のカンファレンスで「私は市場調査なんて一切行わない」と誇らしげに語っていた。
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しかし、消費者調査に基づいた製品開発の助言を自動車メーカーに行うCARLABのノーブルは「サイバートラックの壮絶な失敗は、共感の欠如によるものだ」と指摘する。「この車両は、荷台の構成からキャビンの仕様、性能なといったあらゆる面で、ピックアップトラックに求められる顧客のニーズを満たしていない」
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■呪われた「ステンレス製ボディ」
マスクは最終的に、もう1つの歴史的失敗作として知られる1980年代の「デロリアン」と同様のステンレス鋼の外装を選んだ。しかし、彼はこの素材が抱える課題を十分に理解していなかった可能性があると関係者は指摘するステンレス鋼は曲げにくく、元の形に戻ろうとする性質がある。これがサイバートラックのボディパネルに問題が生じた一因となっている。「テスラは製造工程のトレードオフを見誤ったと思う」とマーサーは語る。「マスクは、2億ドルの無駄な塗装工場のコストを削減できたと考えたが、結局そのコストをステンレス鋼の処理に費やしたんだサイバートラックの開発にテスラがかけた費用は、オースティンでの金型の製造コストを含めて約9億ドル(約1300億円)に上ると彼は推定しているしかも、モデル3やモデルYとは異なり、サイバートラックの開発や生産のコストは、他のモデルと一切共有できないと見られている。
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https://news.yahoo.co.jp/articles/2ca5b4f8af665dd17e02077bbe4e18264f14ae11
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