コロナ禍で、今やすっかり日常風景となったのが自転車で街を疾走するフードデリバリーの配達員の姿。テレビなどでもしばしば取り上げられ、やり方によってはオフィスワークより稼ぐことができると、背広を脱いで、本職にする人たちも増えている。果たして、その現場とは。ルポライターの國友公司氏が取材した――。
満員電車におさらばし、愛車で丸ノ内まで「通勤」
「ルールさえ守らなければ月に40万円など楽に稼ぐことができる」と自慢げに話すのは、フードデリバリーのみで生計を立てるマモルさん41歳(男性・仮名)。誰もが知る外資系大手企業の配達員だ。
マモルさんの本拠地は東京都千代田区丸の内のオフィス街。自宅のある千葉県市川市から東京駅までは、JR総武線で一本である。オフィス街の人々がランチを終え、注文が落ち着いた14時ごろ、マモルさんの貴重な時間をいただき、丸の内のファストフード店で話を聞いた。一体、どんなルール違反を犯しているのだろうか。
「店の敷地内に停めれば、駐禁の奴らも警察も口出しできないから」
そう言うと、マモルさんは配達で使っている愛車の「スーパーカブ50」を、自動ドアの横に堂々と無断駐車した。レジにいる従業員も気が付いているが、客の対応に追われて注意する間もない。マモルさんは毎朝9時にカブで市川の自宅を出発し、約1時間かけて丸の内まで出勤しているという。
「配達員を始めた1年前は、サラリーマンたちと一緒に満員電車に揺られて丸の内まで来ていた。都内はそこらじゅうで電動自転車が借りられるだろ? それに乗って企業の社畜どもに昼メシを配達していたんだけど、自転車だとこなせる数に限界があるんだよ。だから、急いで原付の免許を取ってカブを買ったんだ」<中略>
「寿司がグチャグチャになっていた」と客からクレームが入り、低評価を付けられてしまうかもしれない。低評価が繰り返されるようだと、サポートセンターから連絡が入り、最悪の場合、アカウントが停止されてしまうこともある。そのため、マモルさんは常にわさびのチューブを持ち歩いている。
「ネタとシャリを接着する道具は、わさび以外にない。さびぬきの寿司でも、わさびで接着するよ。だって、それは店側のミスだと客は判断するから。ネタが落ちるような寿司を握る店が悪いし、デリバリーに向いていない寿司を注文するような客が悪い。そんなことで評価を下げられたらたまったもんじゃない。こっちは自腹でわさびのチューブを買っているんだから」
定食チェーンの商品を届ける際、マモルさんは誤ってライスを地面に落としてしまった。ふたが外れ、米が砂利だらけになった。本来なら店に戻り、自分の非を認めたうえで作り直してもらうべきである。
「ちょうど自分の家の近所で配達をしていたから、急いで自宅に戻ったんだ。こんなこともあろうかといつも多めに米を炊いているからね。その日は炊き立てのご飯がまだ炊飯器に残っていたけど、冷凍したご飯も少し水をかけてレンジで温めれば炊き立てのように見える」
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https://mag.minkabu.jp/mag-sogo/25178547019/
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