天満神社の境内に置かれた「ネムリ神」=2020年12月18日午後零時23分、兵庫県丹波篠山市上板井で
大晦日、正月が近づき、普段なら日本人が最も神社に足を運ぶ時期になる。兵庫県丹波篠山市上板井の天満神社では元日に行われる神事の中で、ふしぎな「モノ」が登場する。木の板に過去と現在の男女を描き、境内や御神木の下に置くというユニークなもの。地元住民は、「意味は分からへんけれど、ずっと続いている」。研究者でさえ、「いわれは不明。ある意味『奇祭』」という謎っぷりだ。意味は分からないまま、脈々と受け継がれている風習。みなさんの身近にもあるのでは?
「こんなん見たことあるか」―。始まりは友人からのメール。添付されている画像には2組の男女が描かれた板。1組は現代風の洋装で、もう1組は江戸時代風の着物。男性はちょんまげに裃、女性はまげを結っている。興味をそそられ、同神社に向かっ
◆その名はネムリ神
過去と現在の男女計4枚が1組となり、御神木2カ所と本殿の裏の計3カ所に置かれていた。
全国の祭礼などを記した書籍「祭礼行事」の兵庫県版で、同神社の神事を紹介した民俗芸能学会評議員の久下隆史さん(71)の調査によると、この板は地元で「ネムリ神」と呼ばれており、毎年、元日に行われる神事「シシオイ」で使われる。ネムリ神はその年度の宮当番によって毎年、元日に新しいものに更新されるという。既製品の板を使わず、ヒノキの丸太を割って板にするなど、こだわりがある。
シシオイでは、宮当番らが3組のサカキを2人で持ち、3カ所に置いたネムリ神の間を3往復。その後、ネムリ神の前に鳥居のように立て掛ける。
シシオイの後、「ハナフリ」と呼ばれる神事があり、2束のシキミを力士に見立てて相撲を取らせ、「(中略)照ったりや、降ったりや、夏栗山から雨が降る。太郎も次郎も、蓑傘持ってこい。ホーイ、ホイ」と口上を述べる。シキミは各家に持ち帰り、田に刺すという。
シシオイは名の通り、作物に害を与えるイノシシを追い払うもの。ハナフリはシキミを稲穂に見立てることで豊作を祈願する意味があるとみられる。
◆昭和50年代ですでに不明
いずれも農耕と深い結びつきがあり、シシオイ、ハナフリとも他地域にも存在する。ただ過去と現在の男女を描く「ネムリ神」という名では類例がない。久下さんが昭和50年代に調査に入った際、すでにいわれを知る人はいなかったという。
地元の上板井自治会長の明山重則さん(70)も、「村の中でもこの絵のいわれを知っている人はいない」と言い、「今まで何とも思わなかったけれど、言われてみると、なんなんでしょうねぇ」と笑う。
同神社は文安2年(1445)の創建。菅原道真のほか、末社に猿田彦命(サルタヒコノミコト)、素戔嗚尊(スサノオノミコト)などをまつる。
ここで気になるのが、現代人を洋装で描いている点。洋装が一般化するのは明治時代以降のため、比較的新しい風習なのか、それとも時代に合わせて現代人の姿が変わっただけで、古来、過去と現在を描いてきたのか。前年のネムリ神は焚き上げてしまうため、過去のものは残っていない。
探せる範囲で書物や論文を調べたが、シシオイやハナフリの記述はあるものの、ネムリ神のいわれについては書かれていなかった。
近くの神社に置かれた木の板。こちらは子ども、大人、高齢者のペア
◆近くの神社に似た風習
◆少子高齢化、社会変化 消える風習
===== 後略 =====
全文は下記URLで
https://tanba.jp/2020/12/%E6%AD%A3%E6%9C%88%E7%A5%9E%E4%BA%8B%E3%81%AB%E8%AC%8E%E3%81%AE%E3%80%8C%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%80%8D%E3%80%80%E6%9D%BF%E3%81%AB%E9%81%8E%E5%8E%BB%E3%83%BB%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E3%81%AE%E7%94%B7%E5%A5%B3/