輸入アサリを熊本県産と表示する産地偽装を防ぐため、熊本県は4月から、アサリの産地を判別するDNA検査を独自に始めた。県産アサリの流通過程で外国産が混入していないかを調べる“最後のとりで”。出荷から加工、販売までの間に抜き打ちで回収したアサリの検査を続けている。
検査を担うのは県水産研究センター(県水研、上天草市)。養殖研究部の中野平二さん(63)が「これが、電気泳動装置の中の様子です」と示した写真には、黒い長方形がバーコードのように並んでいた。黒く見えるのがアサリのDNAだという。
アサリの産地はDNA解析によって、「日本国内または韓国南岸」か、「中国または韓国西岸」のどちらかを判別できる。その技術は独立行政法人水産総合研究センター(現国立研究開発法人水産研究・教育機構)が2006年に開発し、農林水産省安全技術センター(FAMIC)が引き継いだ。FAMICは今回、特例として県水研に技術指導し、県が自前で検査できるようになった。
分析には貝の筋肉に当たる貝柱から抽出したDNAを使う。試薬で増幅したDNAに特殊な制限酵素を加えると、分子が特定の塩基配列部分で切断される。この断片の長さが国産は長く、中国産は短い。「電気泳動装置にかけてゲルの網目の間を移動させると、国内産は中国産より早い段階で止まるため見分けられる」と中野さんは解説する。
中野さんは、県が復活に取り組む「クマモト・オイスター」研究の第一人者で、以前からDNA分析に精通。FAMICで研修を受けてアサリの判別技術を身に付けた。工程自体は新型コロナウイルスの検査でも用いられる一般的な方法だが、検体の抽出や試薬の扱いが特殊だという。
「産地偽装の有無を確認する検査は、研究目的以上に正確性が求められる」と中根基行・養殖研究部長。異物が紛れ込まないよう、検査室を工程別に四つのエリアに分けて使うなど、細心の注意を払っている。
有明海沿岸の漁場では、中国産アサリを一時的に保管する「蓄養」や養殖が長年行われており、国内種との交雑を懸念する声もある。県水研は「交雑の有無までは分からないが、少なくともこれまでの検査で中国産の遺伝子は一度も確認されていない」と言う。
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https://kumanichi.com/articles/646546
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