熱海市伊豆山の大規模土石流災害で、起点付近の盛り土造成の現場責任者を担っていた業者が2016年、崩落の危険性について現地を度々確認していた静岡県の廃棄物担当の部局に情報提供していたことが、19日までに分かった。県が公表した公文書に記されていた。この情報が他部署に共有された記録はなく、県は崩落の危険性に対して対策を講じていなかった。
県の公文書によると、この業者の社員が16年2月、定期的に現地調査をしていた県東部健康福祉センターに対し「いつか崩落する恐れはある。時間の問題だ」「崩落すれば『指導を行った』だけでは済まされない」などと情報提供していた。
同センターではその後、土石流発生前の今年6月30日までに現地を計49回調査しているが、いずれも廃棄物の不法投棄の監視で崩落の危険性の調査は行っていない。
業者の社員は14年8月にも、同センターに「伊豆山の現場はこれまで2回土砂すべりを起こしている。下にホテルがあるので、大変なことになる」と情報提供した。県砂防課にも電話で伝えたが、県によると、この際の文書は残っていない。
この業者は前土地所有者の神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)の依頼で現場責任者を担当した。責任者が変更になった後も、のり面整備などを行っていた。
県廃棄物リサイクル課によると、残土に廃棄物が混入していたため、県は廃棄物担当の部署が主体で対応に当たっていたとし、同課の職員は「崩落の危険性まで確認するのは難しかった」と述べた。
県は盛り土の危険性の認識や情報共有の実態について、関係職員にヒアリングするとしている。
静岡新聞 2021/10/20
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/974944.html