低空飛行を続けてきた石破茂首相が窮地に陥った。自民党内に商品券を配った問題は、売りだった「クリーン」のイメージを根底から揺さぶる。違法性を否定する説明は苦しさを拭えず、野党は国会で追及を強めつつ「退陣」要求のカードをいつ切るか見定める。参院選を前に、またも「政治とカネ」で揺れる与党側では首相の求心力が一気に低下し、政局は急速に不透明さを増してきた。
◇詭弁
「身内を見て、国民を見る気持ちが欠けていた」。14日の参院予算委員会で常識外れの「土産」の妥当性を責め立てられた首相は、非を認めざるを得なかった。
3日夜、首相公邸で開いた自民衆院1期生15人との会食に際し、首相は自ら指示して1人10万円分の商品券を配った。受け取った側はいぶかしみ、「珍しくて事務所に保管した」と明かす。
13日昼には党執行部も事実関係を把握。ある幹部は「手の打ちようがなかった」とずさんな対応にあきれ顔を浮かべた。
政治資金規正法は政治家個人の「政治活動」に対する金銭などの寄付を禁止しており、総務省は「商品券は金銭に含まれる」との見解を示す。ただ、首相は「苦労してきた本人、家族へのねぎらい」だと繰り返し、「政治活動」に当たらないとの立場だ。
予算委で日本維新の会の柳ケ瀬裕文氏は「明らかな詭弁(きべん)」と批判。「首相として求心力を高めようということだ。政治活動以外の何物でもない」と切り捨てた。
◇悪習
自民総裁選や国会対策を巡り不明朗な金銭授受があったとの証言は絶えない。ある閣僚経験者は「要人の会食に土産はつきもの。10万円くらいは普通だ」と、かつての「悪習」が形を変えて残ってきたと証言する。
首相が「政治の師」と慕う田中角栄元首相は「金権政治」の代名詞的存在でもある。首相は3日の会食以外でも商品券を配ったと認めており、予算委では「両手で数えて足りるか足りないか」の回数だったと説明したが、額などはあいまいな言い回しに終始した。
「らしくないことをした」。自民執行部の一人は天を仰いだ。
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