地球温暖化への影響が懸念されるガス冷媒に代わる技術として「固体冷媒」の研究が進む。東京大学大学院理学系研究科の大越慎一教授とアイシンの共同研究チームは27日、世界最高水準の冷却性能を示す固体冷媒の開発に成功したと発表した。圧力を加えたり開放したりすることで温度が上昇および下降する「バロカロリック効果(圧力熱量効果)」で大きな断熱温度変化を観測した。電気自動車(EV)の熱マネジメントをはじめ幅広い用途での活用を目指す。
開発した固体冷媒「ルビジウムシアノ架橋マンガン―鉄―コバルト化合物(RbMnFeCoプルシアンブルー)」は圧力による断熱温度変化が340メガパスカル(メガは100万)の圧力で74度C、560メガパスカルで85度Cのバロカロリック効果を示す。「断熱冷却温度および断熱加熱温度が史上最高の無機固体冷媒の開発に成功した」(大越教授)。圧力の印加・開放を100回繰り返しても性能の劣化がみられなかった。安定した圧力熱量効果を示すだけでなく、温室効果やオゾン層の破壊がないため国連の持続可能な開発目標(SDGs)やグリーン・トランスフォーメーション(GX)に貢献する。
現在、ほとんどの冷却技術はガス冷媒の膨張圧縮を利用している。ただ、オゾン層破壊物質であるフロンに代わり冷媒として用いられる代替フロンは、地球温暖化の原因となる温室効果ガス(GHG)に位置付けられており、代替材料として固体冷媒が注目されている。
アイシンの山本義久取締役は「具体的な製品は検討中だが、2030年ごろをめどに製品化ができればと考えている」と説明。将来は冷蔵庫やエアコン向けにも実用化を狙う。
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