2019年には3188万人のインバウンド客が日本を訪れていたが、そのうち30%が中国本土からの観光客だった。日本の観光市場にとって「お得意様」だった中国人観光客の消失を、ホテル側はどう思っているのだろうか。
意外にも、ホテル側の受け止めはいたって冷静だ。
「受け入れ態勢ができていないので、いま中国人団体観光客に来られても困る」と、名門ホテルの幹部は胸をなでおろす。他のホテルも異口同音に「中国人客のキャンセルなどによる影響はほとんどない」と語る。
実際、インバウンドを集客できる都内のホテルの経営状況はコロナから急回復している。藤田観光が運営する1000室以上の大型ホテル「新宿ワシントンホテル」の客室単価・稼働率は現在、コロナ禍前を上回っている。
中国本土からの需要は回復していないものの、家族やグループでの宿泊が多いほかの国からのインバウンド客が増えたことで、宿泊人数が増加し客室単価の上昇につながっているのだ。<中略>
ホテル側はコロナ禍後の顧客層の変化にも対応してきた。欧米インバウンド客や国内レジャー客は個人旅行が中心だ。こうした個人客は、ホテルが提示した価格で予約をするため単価が高くなりやすい。
他方、中国人は団体客が多い。団体客は数十名など大規模の予約が事前には入るため稼働が高くなるが、旅行代理店へ客室を安く販売することが多い。
人手不足が顕著ないま、「わざわざ客室稼働を上げ、単価を下げてまで中国人の団体客を取らなくてもいい」というのがホテル側の本音なのだ。
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