リアルサウンド2021.11.18 07:00
https://realsound.jp/tech/2021/11/post-905814_2.html
カメラメーカーのニコンが、新しいミラーレスカメラ『Z 9』を発表した。本体価格は69万8500円(税込)と非常に高価だが、ニコンのベストセラーカメラ「D850」に迫る予約状況とのことで好調が伺える。
一体なぜこれほど人気なのか。その理由を語る前に、まずはニコンを始めとするデジタルカメラメーカーの状況を整理しておきたい。
スマホで高画質な写真が簡単に撮影できる現在、デジタルカメラは斜陽産業となりつつある。主なメーカーは、ソニー、キヤノン、ニコン、富士フイルム、リコー、パナソニック、OMデジタルソリューションズなど。いずれのメーカーにも個性があり、例えばソニーはAF(オートフォーカス)やAIの精度、富士フイルムはクラシカルなデザインと独特の色使い、キヤノンはファミリーからプロまでの幅広いモデルと過去のレンズ資産などなど、各社違いが見受けられる。
かつてはカメラといえば一眼レフと言われていたが、ここ近年はミラーレスカメラが主流となりつつある。業界もミラーレス競争を繰り広げてきたが、このミラーレスという世界において、ニコンはいまひとつインパクトがなかったのだ。逆にソニーやキヤノン、富士フイルムは、ミラーレスの特徴を利用した革新的なカメラを展開してきた。
また、カメラはおよそ1年ごとにモデルチェンジを繰り返している。なかでも各メーカーの最高の技術を詰め込んだフラッグシップモデルの発表は、世界中のカメラユーザーが楽しみにしている。2021年にはソニーの『α1』、キヤノンの『EOS-1D X Mark III』が、プロに向けたフラッグシップとして発表された。いずれも高価格モデルだ。
そこにきてニコンが2021年10月末に発表したのが『Z 9』だ。そのスペックは今までのニコンのミラーレスカメラをはるかに凌駕するもので、個人的にはニコンのすべての技術が結集した究極のカメラに思える。簡単にスペックを見ていこう。
有効画素数は4571万画素のFXフォーマット(フルサイズセンサーのこと)、最大で秒間120コマの連写が可能だ。また、ニコンのミラーレスでは初の3Dトラッキング対応。さらには、世界最多となる9種類の被写体検出にも対応している。
極めつけは、8K30pの動画撮影だ。近年はスマホでも4K動画が撮影できるようになってきたが、その次の8Kを捉えているモデルも出始めている。だが、キヤノンの『EOS R5』が8K動画を搭載した際は、オーバーヒートにより長時間の撮影ができなかった。8K動画はまだまだ挑戦的なジャンルなのだが、『Z 9』の8K動画は2時間以上の内部記録が可能となっている。ミラーレスカメラにおいては偉業だ。しかも今後、ファームアップにより8K60pにも対応すると公言している。
このように、『Z 9』はいままでのミラーレスカメラを過去のものにしかねない、現時点での最高峰のカメラとして期待されている。『Z 9』の特設サイトにはその自信をにおわす様々な動画やコンテンツが公開されているため、気になった人はぜひチェックして欲しい。『Z 9』で撮影された8K30pの映像もあわせて紹介しておく。
ニコンは2021年7月に『Z fc』というクラシカルなデザインのカメラも発売しており、こちらの売上も好調なのか想定以上の予約状況により、一部配送に時間がかかっているようだ。日経新聞によるとニコンは2022年3月期の収益予想を70億円ほど上方修正しており、会社としても新しいカメラに期待を寄せているのが伺える。ここから、ニコンの逆襲が始まるかもしれない。
写真
https://realsound.jp/wp-content/uploads/2021/11/20211117-nikon02.jpg.webp
動画