30歳会社員が青ざめた…会社の一斉「夏休み」で自分だけ「給料カット」の非常事態
労基法により、社員が年に最低5日は取得しなければいけない有給休暇(有休)。ある会社では、社員全員に「夏休み」として一斉休暇を取らせて、一挙に消化させようとしたのだが、思いもよらぬ事態が発生し……。社会保険労務士の木村政美氏が解説する。
「会社の夏休みについて、今年度の正式な日程が決まったのでお知らせします」
8月上旬、製造業を営む甲社(従業員数50名)の全体朝礼の場でA田総務課長(以下「A田課長」、仮名=以下同)は全社員に向けて発言した。
「前月上旬の朝礼でも説明した通り、毎年生産量が極端に減る8月下旬に工場の稼働を停止し、その間夏休みとして社員全員一斉に休暇を取ってもらいます」
そして話を続けた。
「会社としては、皆さんに夏休みを取ることで心と身体を十分にリフレッシュしてほしいと思います。そして今年度の休みですが8月20日から28日までの9日間です。この期間は工場が閉鎖になるので出勤はできません」
A田課長が話し終えた頃を見計らって、B山さん(30歳・製造課勤務)はサッと手を挙げた。
「課長、夏休み期間中の給料はどうなるんですか?」
「今年度の例でいくと、8月20日(土)21日(日)27日(土)28日(日)の4日間は公休、22日(月)から26日(金)までの平日5日間は皆さんの年次有給休暇(以下「有休」)を充てます。だから給料がカットされる心配はありません」
甲社の従業員は全員正社員で、4月1日付採用で入社。10月1日には10日間の有休が付与され、その後は毎年10月1日に勤務年数により労働基準法(以下「労基法」)で決まった日数の有休が付与される。社員が担当する業務は少々の残業はあるが激務と言うほどではなく、個々の仕事を調整すれば有休が取れる環境にあった。
しかし以前から社内全体に有休を取ろうとする雰囲気がなく、病気などで会社を休んだ時に後日振り替える程度で取得率が極端に低かった。A田課長はかつて、社員になぜ有休を取らないのかと聞いたこともあったが、一様に
「普段の用事は週末休みで済ませればいいし、年末年始は特別休暇がある。その上有休を取っても何もすることがないから」
と答えた。かく言うA田課長も同じ状況だったので、社員の返答に納得してその後の対処をしていなかった。
その後、労基法の改正で最低年5日の有休取得が義務化されたので、A田課長はその分だけでも有休を取るようにと社員を説得し休ませた。しかしこの状況に困ったA田課長とC川社長は1年の間でいちばん業務量が少ない8月下旬に工場を閉鎖し、社員全員一斉に5日間の有休を取得させることを考えついた。
しかしここで困った問題が起きた。
アウトドアが趣味のB山さんは他の社員と違い、毎年積極的に有休を利用してキャンプや釣りなどに出かけた。そして今年はGWに長く休んだこともあり、5月末の時点で自分の有休を全部消化していた。B山さんに新たな有休が付与されるのは今年の10月1日。それまでは有休を使うことができない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/81f3eb42f7b56f95ff37ceffa1cd853b8966b0ac?page=1