高倉健さんの手紙も見つからず…焼け落ちた老舗映画館「どうしようもなかった」
北九州市小倉北区の 旦過たんが 市場付近で10日夜に起きた火災では、市民や映画関係者らに古くから親しまれてきた老舗映画館「小倉昭和館」も焼け落ちた。館主の樋口智巳さん(62)は、変わり果てた姿を見つめ、「皆さんに愛して、育てていただいた昭和館を失ってしまい、本当に申し訳ない」とむせび泣いた。
小倉昭和館は1939年、芝居小屋を兼ねた映画館として樋口さんの祖父が創業。市内唯一のミニシアターで、35ミリフィルム映写機を使うなど貴重なフィルムでの上映も行っていた。樋口さんは2011年から館主として、映画ファンに尽くしてきた。
2度の火災に襲われた小倉昭和館。被害が小さかった4月の火災では、復旧作業を行うほかの店主らに映画館を休憩所として提供し、営業を後回しにしていた。それでも、10日後には上映を再開。創業83年となる今月20日には無料上映会などを計画していた。
しかし、今回は4月とは違った。樋口さんが駆け付けると、すぐに火の手が回った。漏電検査を行うなど火災に細心の注意を払っていたが、「人がいない夜に起きてはどうしようもなかった」と肩を落とした。
11日午後、立ち入り規制の中、消防関係者の立ち会いでそばまで行った。屋根が落ち、焼け跡が広がっていた。配給会社から借りていたフィルムや、交流のあった俳優高倉健さん(2014年死去)の手紙、リリー・フランキーさんの直筆メッセージなど思い出の品の多くは見つからなかった。
「街の人たちが必要としてくれるなら、小さくなっても、つないでいければ。でも、今はそんなことを言える状況じゃない」。樋口さんが焼け跡から持ち出せたのは、映画館の「チケット売場」と書かれたプレートなどごくわずかだった。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220811-OYT1T50249/












