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「(船体についていた)傷のことは知らなかった」
北海道・知床半島沖で23日、「知床遊覧船」社が所有する観光船「KAZU Ⅰ」が浸水し、乗員乗客26人のうち11人の死亡が確認された事故。冒頭の発言は、同社の桂田精一社長(58)が24日の家族への説明会で話したもの。翌25日午後に開かれた説明会には姿を見せなかった。
桂田社長は地元の4社でつくる「知床小型観光船協議会」の会長を務めているが、他社よりも1週間前倒しして今期の営業を開始。事故当日が営業初日だった。事故を起こした船長の豊田徳幸さん(54)は2年前に入社し、昨年、船長になったばかり。甲板員の曽山聖さん(27)も今年4月入社で、船員の経験はなかった。
知床は9月下旬になると波が高くなり、冬場は流氷で覆い尽くされるため、GWから9月までの実質5カ月間しか商売ができない。ただでさえ、コロナ禍で観光船の売り上げは激減。観光船協議会は2020年、クラウドファンディングで運転資金を集めていた。
「知床遊覧船の会社の前を通り掛かると、地元ナンバーの車にまで手招きをして客引きをしていました。それだけ売り上げアップに必死だったようです。前船長は社長と意見が合わず、昨年3月に解雇され、後任に仕事を教える間もなく、スタッフが総入れ替えになってしまった。天気も見られない、この辺りの地形にも慣れていない人が、船長をしていたわけです。北風が強くなると波が高くなるのは、漁師の間では常識です。23日も風が出てきて漁船は一斉に引き返してきたというのに、1隻だけ出て行ったら助けようがない。だから地元の漁師は1隻では出港しません。たくさん船が出ていれば無線で連絡を取り合って駆け付けられたのですが……」(漁業関係者)
■町議の息子で複数の宿泊施設を経営
桂田社長は斜里郡出身で茨城県工業技術センター窯業指導所(現笠間陶芸大学校)を卒業。15年ほど前に地元に戻り、宿泊業を営み、斜里町の町議だった父親の後を継いだ。世界遺産「知床」地区で「国民宿舎桂田」「ホテル地の涯」「海に桂田」など複数の宿泊施設を経営。2016年に「知床遊覧船」を買い取り、社長に就任した。「いい印象はありませんね」と、地元関係者がこう続ける。
「はたから見ると裕福な印象でしたが、実際はそうではなかった。お金にだらしなく、それが一因で10年ほど前に奥さんと離婚した。その後、今の奥さんと再婚しましたが、事業を拡大し続け、借金を重ね、銀行からお金を借りられないくらい、借金が増えていたようです。他の会社は元漁師や経験者が経営に携わっているのに、知識も経験もない桂田さんが、なんで観光船なんかに手を出したのか、疑問に思っていた。町全体が何ともいえない、重苦しい雰囲気に包まれています」
海や船の知識がないズブの素人ばかりが観光船の運航をしていたのだとしたら、本当に怖い。
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