歴史的な高インフレや新型コロナウイルス禍の影響長期化など、米企業は多くの難題に直面しているが、記録的なドル高に対する嘆きが再び経営幹部の間に広がり始めている。
マイクロソフトはドル高が利益を圧迫するとし、四半期途中としては異例の利益見通し修正を発表。バイオジェンやコストコホールセール、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、 セールスフォースも最近のドル高に不満を抱き、同じようなコメントを残している。
何年にもわたり比較的穏やかな動きが続いてきた世界の通貨市場で、ボラティティーが急上昇している。世界中の中央銀行がインフレ加速の抑制を図り、引き締めを進めているためだ。米連邦準備制度が利上げを主導する中で、ドルは過去1年間で対円で22%余り、対ユーロでは15%上げた。
海外販売に頼る多くの米企業にとって、ドル高はマイナスに作用する。ドル高が進むほど、ドル換算での海外収益が減るほか、現地通貨での値上げを招き、米製品の競争力が低下する。
ロイトホルト・ウィーデン・キャピタル・マネジメントのチーフ投資ストラテジスト、ジム・ポールセン氏(ミネアポリス在勤)は「ドル相場の影響で米企業が世界の市場から締め出されるとの懸念がある。海外事業が大半もしくは少なくともかなりの部分を占める米大手企業があることを踏まえると、非常に深刻だ」と述べた。
ブルームバーグ・インテリジェンスのジーナ・マーティン・アダムズ株式戦略ディレクターによると、米企業の約35%はドル高が1株利益を著しく損ねるのに十分な対外エクスポージャーを有している。これらには、複雑なグローバル事業を通じ国外で売り上げの3分の1強を生み出すことができる米最大級のテクノロジー企業が多く含まれている。
クラウドベースの顧客管理ソフトウエアで業界をリードするセールスフォースは5月31日、通期の利益予想を上方修正したが、ドル高を理由に通期売上高に対し見込まれる為替の悪影響を6億ドル(約800億円)と倍に引き上げた。
マーク・ベニオフ共同CEO(最高経営責任者)は同日の決算会見でドル高に関し、 「日本に旅行する観光客にとってはいいことだが、日本市場からの売上高に影響がある」と述べた。
実際、ブルームバーグの分析によると、決算会見での「外国為替」への言及はここ3年で最も頻度が高く、「ヘッジ」は2016年以降のどの四半期よりも多く触れられている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-06-14/RDFX50T1UM0W01
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