アサリ、ワカメ、ウナギ…相次ぐ国産偽装の主犯は業者でなく「安いニッポン」
つまり、日本の流通が、メーカーや生産者に対して「値上げするな」と無言の圧力をかけているのは、世界でもトップレベルで「安さ」に執着して、「国産品」に強いこだわりをもつ日本の消費者を敵に回さないためだ。流通や小売りにしても生き残るためには、生産者や卸業者に「安い国産」を求めていくしかないのである。
歴史をさかのぼれば、産地偽装というのは戦前から確認されている。
銀座のデパートで売られていた近江牛が、その他の地域の牛だったというほのぼのとしたものから、米の値段が値上がりして清国産の米が混ぜられたなんていう、現代にも通じる産地偽装が昭和初期から確認されている。
しかし、この20年ほど、産地偽装がたて続けに起こっている時代はない。
確かに、昔と比べたらチェック機能が格段に向上しているということもあるが、筆者には消費者が「安さ」をこれまで以上に強く求めるようになった「安いニッポン」の弊害もあるのではないか、と考えている。
よく産地偽装のニュースになると、その業界の構造的な問題が指摘され、「闇が深い」などと評される。しかし、最も闇が深いのは、国内生産者たちが置かれた厳しい現実を直視せず、「お客様は神様だろ」と言わんばかりに、「安い国産を食べさせろ」と叫び続ける我々消費者の身勝手さなのではないか。
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