「映画を盗むな」の広告がむしろ海賊行為を増やしている 仏研究
デジタル技術の発達に伴い、いわゆる海賊行為が映画業界に深刻な打撃を与えるようになってきた。映画館で上映中の作品を密かに撮影する、あるいはストリーミングで配信された画面を録画するなどの手法により、不正に作品に複製し再流通させる行為だ。
このような問題行為は著作権法に抵触するだけでなく、業界の収益性を損ね、新たな映画作品が生まれにくい環境を作り出してしまう。
手を焼く各国の映画業界は、上映前に不正行為防止を呼びかけるCMを上映し、モラル向上を訴えてきた。日本の映画館では必ずといっていいほど「NO MORE 映画泥棒」のマナーCMが流れているほか、アメリカやイギリスなどでも過去にDVDの冒頭に公共広告が挿入されていた。
しかし、こうした広告を頻繁に流しすぎると、かえって海賊行為を行いやすい心理状態を生んでしまうことがあるようだ。行動経済学の観点からの課題として、フランスの学者たちが論文を発表し問題提起している。<中略>
しかしグロロー博士らは、こうした啓発映像を頻繁に目にすることで、視聴者らは海賊行為に対して徐々に垣根の低さを感じるようになると指摘している。多くの人が海賊行為を行なっているとの認識が広まるため、この広告は「逆効果であり、海賊行為を助長する」と博士らは述べる。
特定の行為を禁じれば、それが頻発していると明かす結果に
この効果をより具体的に説明するため、論文では、アリゾナ州のペトリファイド・フォレスト国立公園の事例を取り上げている。
樹木の幹がそのままの見た目で化石化している同地では、広大な敷地内に点在するこうしためずらしい化石を持ち去る例が相次いでいた。だが、持ち去り防止を呼びかける看板を公園管理者側が設置したところ、かえって持ち去り事例が増加したのだという。
ほかの人々も持ち去り行為を行なっているのだと間接的に告知することで、かえって不法行為への心理的障壁が下がってしまったためだと考えられている。博士たちは映画の海賊行為についても同様であり、過剰なマナー広告は逆効果だと指摘している。
全文はこちら
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/08/post-99469.php