「ニュースを見て10秒で決めた。プラスチックだからこそ、環境を守りながら豊かな生活を実現できるんです」――。
日本一のストローメーカーであるシバセ工業を率いる磯田拓也、63歳。2018年に脱プラ運動が盛り上がるなか、先進7カ国(G7)で「海洋プラスチック憲章」が採択されると、迷わずにプラスチックストロー生産の継続を決めた。
社員数50人の企業が直面した「脱プラ運動」
「ストロー発祥の地」と呼ばれる岡山県浅口市を本拠地にし、国産業務用ストロー生産で5割のシェアを握るシバセ工業。1949年にそうめんの加工・販売でスタートし、それから20年後にブラスチックストローの生産へ大転換した。
祖業の名残は今もある。本社敷地内で存在感を放つ三角屋根の木造建築だ。1949年の創業時に建てられたそうめん熟成用の蔵であり、現在はストローの保管庫として使われている。
シバセ工業は年商5億円・社員数50人の中小企業であり、世界的な脱プラ運動の直撃を受けたらたちまち押しつぶされてしまいそうだ。プラスチックにこだわり続けて大丈夫なのだろうか。
ストローが突き刺さり、血を流すウミガメの動画
G7の憲章採択は脱プラ運動が進む通過点の一つにすぎない。起点となる“事件”はそれより3年前の2015年に起きている。衝撃的動画が世界的に拡散し、各国が海洋汚染問題に目を向け始めたのだ。
動画に映っていたのは、中米コスタリカ沖で米テキサスA&M大学の研究チームが保護した1匹のウミガメ。1本のプラスチックストローが鼻に突き刺さり、苦しそうにしている。ストローは鼻の中にすっぽり入り込んで先端しか見えない。
ペンチで先端をつかんでもストローはなかなか抜けない。鼻から血がにじみ出ており、ウミガメは痛みに悲鳴を上げているようだ。8分後に抜け出たストローは長さ10センチ以上。血まみれになって変形していた。
チームリーダーのドイツ人海洋生物学者クリスティーン・フィグナーは一部終始を撮影し、ユーチューブへ投稿。動画は瞬く間に世界を駆け巡り、大々的な脱プラ運動を引き起こした。これまでに1億回以上も再生され、プラスチックを取り巻く環境を様変わりさせた。
あまりにもウミガメ動画のインパクトが大きかったことから、「BTTV」と「ATTV」で時代を区分する動きもある。前者は「ビフォー・ザ・タートル・ビデオ(カメの動画前)」の略、後者は「アフター・ザ・タートル・ビデオ(カメの動画後)」の略だ。
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