北海道日本ハムファイターズが移転した札幌ドームの利用が伸び悩んでいる。イベント誘致策として場内を仕切る「新モード」を導入したものの、期待するコンサートなどは開かれず、稼働日数も半減と厳しい船出となった。
9月10日に行われたラグビー・ワールドカップの日本戦で実施されたパブリックビューイング(PV)。球場内は天井からつるされた高さ30メートルの暗幕で内外野が仕切られ、大型スクリーンが設置された。日本代表を応援していた札幌市の男性会社員は、「違和感はないし、これもアイデア。どんな形であれ、ドームが今後も使われればいい」と話した。
約4万人を収容できる札幌ドームだが、それだけの集客力をもつアーティストは限られる。新モードは2万人規模にすることでコンサートなどを招致しやすくするのが狙いだが、使われたのは、W杯のPVが初めてだった。
高校生利用は収益少なく
収益確保のために稼働率の回復は急務だが、札幌ドームによると、今年4~9月のイベントでの使用は48日と、2022年の90日から約半分になった。開催中の秋季高校野球や、来月には全国高校サッカー選手権北海道大会決勝、新モードによる地元高校生らの音楽イベントも開催されるが、利用料の減免制度などが適用されるため、収益は少ない。
埋まらぬ広告
広告事業も深刻で、プロ野球中継がなくなり露出が見込めないため、昨年度55枠あった内外野のフェンス広告は今年度から新規販売を中止した。コンコースの柱や壁面を含めた今季の広告80枠のうち9月までに埋まったのは7割という。
市の見通しでは、24年度に黒字転換し、27年度には4800万円の営業利益を見込んでいるが、予想以上の落ち込みに実現は厳しい状況だ。市では、「新モードを含めたコンサートなどで利益を出しながら、地域に根付いたアマチュア大会も実施して、市民に足を運んでもらえるドームを目指す」としているが、難しいかじ取りが求められている。
球場を仕切り収容人数を半分にする「新モード」について、イベント会社はどう見ているのか。道内でコンサート運営を手がける「マウントアライブ」(札幌市)取締役本部長の数原歩さんは「半分というイメージを変えることが重要」と指摘する。アーティストは「ドームでやるなら満員の4万人を」という希望が強いことや、使い方のイメージもわかないのが不調の要因と考えられるという。コンサートは大規模なステージの造営や音響装置が必要で、そのあたりもラグビーのPVでは分かりにくいそうだ。
「新モードの活用法を効果的にアピールできる」と数原さんが提案するのは、複数のアーティストが参加するフェス形式のコンサートの実施だ。さらに、会場の大きさはアーティストの人気や成長を測る物差しでもあるとし、「新モードで公演し、ゆくゆくは4万人規模のステージに立つストーリーができれば、イメージも変わっていく」と話している。
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