1:名無しさん




2.2. 海外の視点から見た「かわいい」

宮元(2008)著の『日本の美意識』では、「かわいい」という感性が全世界で注目され るようになった切欠として、日本の大衆文化の代名詞とも言える「オタク文化」との関 連を指摘している(p.209)。

二〇〇四年には、イタリアで行われたベネチアビエンナーレ国際建築展の日本館で 開かれた「おたく展」では、東京・秋葉原の町並みが再現され、来場者にショック を与えた。この展覧会では、日本の「おたく文化」が広く紹介されるとともに、そ の根底にある「かわいい」という新しい美意識に光が当てられたのである。

更に、アメリカでは“kawaii”が英語の形容詞として用いられるまでになり、その意味 は「かわいい」と対照的な「格好いい」のニュアンスすらも内包した、日本の新しい美 意識なのだと考えている。

また宮元(2008)は、日本人の美意識には古くから「滅びの美学」が受け継がれており、「かわいい」もまたその延長線上にあると論証している。

『日本の美意識』では、「か わいい」には元来「ふびんだ」、「気の毒だ」という意味があり、そのようなネガティヴ な状態をポジティヴなものに捉え直すということは、古くからの日本の美学に通ずるも のであると指摘している。更に、未完成であるということは同時に永遠不滅であること も示し、未熟で幼く、今にも壊れそうな様子を「愛しい」と思う状態を示すことからも、 「かわいい」は日本の美意識のルーツを辿ってきたものであると考えている。これらを 踏まえ、宮元(2008)は「かわいい」という日本の美意識が世界中で注目されるように なった理由を、「ひと言でいえば、それは二〇世紀社会の経済的発展に対するアンチテー ゼといえるだろう。『かわいい』は、成長や成熟を否定する美意識である」とまとめてい る(p.215)。

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https://twcu.repo.nii.ac.jp/record/20040/files/021_ISHIKAWA_20160301.pdf