日本で古くから親しまれてきた食用魚の「シシャモ」が激減している。かつては2千トン以上とれた年もあったが、近年は極端な不漁の年が目立つ。2021年の漁獲量は、20年前に比べて1割以下の172トンにまで減った。なぜこれほど少なくなってしまったのか――。シシャモの産地・北海道の研究者たちが、そのナゾ解きに挑んだ。
「シシャモの取りすぎを防ぎ、資源を守るために、様々な取り組みが行われてきた。にもかかわらず、なぜ数が減り続けているのか。それを、実験で解き明かそうと思ったんです」
北海道立総合研究機構栽培水産試験場に勤務する岡田のぞみ主査は、新たな研究の動機について、そう語る。
シシャモは、北海道の太平洋岸にのみに生息する。親魚は秋に川をさかのぼり、川底に直径1・3ミリほどの卵を産み付ける。卵は春に孵化(ふか)し、生まれた仔魚(しぎょ)は海へと下り、北海道の沿岸海域で育つ。漁獲量は減少傾向が続き、01年に2354トンあった水揚げは、12年以降は1千トン未満と低迷。20年は301トン、21年は172トンと記録的な不漁になった。
岡田さんが注目したのは、シシャモの稚魚たちが暮らす海の水温だ。
「近年の海水温の上昇が、シシャモに何らかの悪影響を与えているのでは」
そんな疑問から、温度条件を様々に変えた水槽で実際にシシャモの稚魚を飼育し、どんな影響が出るのか調べることにした。
実験では、体長が3~4センチの稚魚を使った。たくさんの水槽を用意し、それぞれ細かく水温の設定を変えた。12度から24度まで、2度刻みで7種類の水温条件の水槽を用意した。
4週間後の生残率を調べたところ、温度条件が12~20度の水槽ではほぼ全ての個体が生き残った。ところが、22度以上では生き残る個体の割合が低下し、24度では、ほとんどの稚魚が死んでしまった。
稚魚の成長率も詳しく調べたが、水温16度の条件で最もよく成長し、20度以上では成長率が著しく低下することがわかったという。
シシャモの名産地として知られる北海道むかわ町の周辺海域では近年、8~9月の平均水温が20度を超す年が以前に比べて多くなっている。
岡田さんは一連の実験をもとに、「夏場に水温が高いと稚魚が十分に大きく成長できず、大型の魚などの天敵に食べられやすくなって生残率が下がる。これが近年のシシャモの減少につながっている可能性がある」との結論を出した。
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https://www.asahi.com/articles/ASR2S52SPR2GIIPE00C.html
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