【キーウ共同】戦時下のウクライナの首都キーウ(キエフ)で、日本のラーメンチェーン「麺屋武蔵」が地元客に人気だ。2014年にウクライナ東部紛争で飲食事業を失った男性らが再起を懸け、東部ハリコフを含め7店を展開する。今年2月のロシア侵攻後一時閉店したが春には再開。戦火はやまず厳しい状況だが、日本食の将来性を信じて踏ん張っている。
運営会社の創業者ウラジーミル・マスリャンスキーさん(60)は14年当時、東部ルガンスク市でホテルやゴルフ場などに飲食店15店を経営。同年勃発した東部紛争で市は親ロシア派武装勢力「ルガンスク人民共和国」の実効支配下に入ったため避難し、全店を失った。
マスリャンスキーさんは15年、キーウで事業を再開。この頃、東京に本社を置く「麺屋武蔵」の日本人関係者と知り合い「日本食といえば、すしばかり。ラーメンは手軽でおいしく、スープ好きの国民性にも合う」と直感。フランチャイズ権を得て同年11月に1号店を開いた。唐揚げ専門店「鶏笑」など他のブランドも含め、キーウを中心に14店を展開するまでに成長した。
7月中旬にキーウ中心部の麺屋武蔵を訪れると、にぎわっていた。それでもマーケティング責任者エフゲニー・シャフィロフさん(33)は「客は侵攻前の半分。日本人らアジアの客も戻っていない」と話す。新型コロナウイルス禍に侵攻が追い打ちをかけ、全店で350人いた従業員は半分に。閉鎖が続く店もある。
侵攻による一時閉店中はウクライナ軍に弁当を作り、提供した。ロシアが制圧した南東部マリウポリの店は失ったが、マスリャンスキーさんは「過ぎたことを考えても仕方がない」と前を向く。
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